研究課題/領域番号 |
18K01125
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
矢ケ崎 典隆 日本大学, 文理学部, 教授 (30166475)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移民 / 砂糖 / 南北アメリカ / サトウキビ / テンサイ / グローバリゼーション / ローカリゼーション |
研究実績の概要 |
グローバリゼーションに伴って世界と世界の諸地域はダイナミックに変化しており、地域変化を認識し、そのメカニズムを解明することは地理学の課題である。グローバリゼーションの研究動向を概観すると、グローバルスケールにおける政治、経済、社会に焦点を当てて世界像が描かれる一方で、グローバリゼーションの影響を受けて変化する地域像は十分に解明されてはいない。本研究は、グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学の考察の枠組みを用いて、南北アメリカの砂糖と移民を研究対象とする。資本、製糖工場、原料調達、労働力に着目して製糖地域の特徴を明らかにするとともに、製糖地域間の関係や、グローバルな生産・消費の動向との関連性を考察する。ローカルスケールの事例研究と、砂糖をめぐるグローバルスケールの動向を関連付けて考察することにより、グローバリゼーション研究と砂糖・移民研究に新たな知見を付加することができる。 今年度は、アメリカ合衆国を対象として、現地での資料収集を3回行った。すなわち、アメリカ南部のサトウキビ糖地域について、ルイジアナ州とフロリダ州において文献資料を収集するとともに、ミシシッピ川下流部とフロリダ半島南東部では収穫期のサトウキビ糖地域を観察することができた。カリフォルニア州のテンサイ糖産業とハワイのサトウキビ糖産業の関係について、カリフォルニア大学図書館等において、クラウス・スプレックルズに関する資料を収集した。さらに、ハワイ州では、オアフ島とハワイ島を訪問して、大学図書館や博物館等でサトウキビ糖産業に関する資料を収集するとともに、旧サトウキビ地帯の変容を現地で観察した。なお、昨年度から蓄積されつつある資料に基づいて、コロラド州のテンサイ糖産業に関する論文や、世界の砂糖生産地域に関する地理学の考察の枠組みを論じた論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために、現地における資料収集は中心的な研究活動である。今年度は、アメリカ南部のサトウキビ地帯について、昨年度に実施した予察的な資料収集の結果を踏まえて、収穫期にミシシッピ川デルタとフロリダ半島南東部を訪問し、サトウキビ畑と製糖工場の分布を確認するとともに、収穫風景を画像に残すことができた。カリフォルニアのテンサイ糖産業については、昨年度、かなりの資料を収集したが、クラウス・スプレックルズに関する未公表の資料をバンクロフト図書館で読むことができたのは収穫であり、成果の公表に向けて準備を進めている。ハワイについては予察的な資料収集を行った結果、既往研究の概要と資料の所在を把握することができたし、次年度の調査に向けての方針と課題を明らかにすることができた。以上のように、調査はおおむね順調に進展している。研究成果の公表についてもおおむね順調である。今年度は、アメリカ西部のテンサイ糖産業に関する論文を学術誌(歴史地理学)に投稿し、受理・刊行されたし、砂糖関係の業界誌(砂糖類・でん粉情報)からの依頼を受けて、世界の砂糖生産地域に関する論文を執筆した。研究成果は引き続き公表していく。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)は、アメリカ南部(ルイジアナ州とフロリダ州)のサトウキビ糖産業に関する補足調査を実施する予定である。また、ハワイのサトウキビ糖産業と日系移民について、本格的な調査を計画している。特に、マウイ島とカウアイ島の旧サトウキビ地帯を訪問する予定である。収集した資料に基づいて、アメリカ西部のテンサイ糖地域、アメリカ南部のサトウキビ糖地域、ハワイのサトウキビ糖地域の関係について、製糖工場、資本、原料調達、労働力に着目して比較対照し、地域間の動態的関係について考察を進める。 なお、今後の研究の遂行に関して、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を考慮する必要がある。すなわち、現地での資料収集を縮小せざるを得ない状況である。そこで、西インド諸島のサトウキビ糖地域については、文献資料を収集して議論することとし、ブラジルのサトウキビ糖地域については、1990年代にブラジル北東部で収集した資料を活用することとする。 以上の研究成果を踏まえて、砂糖と移民のグローバルシステムの形成と動態について考察する。その際に、私が以前に提示した南北アメリカの三つの経済文化地域(北西ヨーロッパ系経済文化地域、イベリア系牧畜経済文化地域、プランテーション経済文化地域)のモデルとの関連性を意識しながら考察を行う。なお、研究成果については学会発表や論文として公開する予定である。
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