研究課題/領域番号 |
18K01125
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
矢ケ崎 典隆 日本大学, 文理学部, 教授 (30166475)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 移民 / 砂糖 / 南北アメリカ / サトウキビ / テンサイ / グローバリゼーション / ローカリゼーション |
研究実績の概要 |
グローバリゼーションに伴って世界と世界の諸地域はダイナミックに変化しており、地域変化を認識し、そのメカニズムを解明することは地理学の課題であり目的である。グローバリゼーションの研究動向を概観すると、グローバルスケールにおける政治、経済、社会に焦点を当てて世界像が描かれる一方で、グローバリゼーションの影響を受けて変化する地域像は十分に解明されてはいない。そこで本研究は、グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学の考察の枠組みを用いて、南北アメリカの砂糖と移民を研究対象とする。資本、製糖工場、原料調達、労働力に着目して製糖地域の特徴を明らかにするとともに、製糖地域間の関係や、グローバルな生産・消費の動向との関連性を考察する。ローカルスケールの事例研究と、砂糖をめぐるグローバルスケールの動向を関連付けて考察することにより、グローバリゼーション研究、砂糖研究、移民研究に新たな知見を付加することができる。 今年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響を受けて、予定していたアメリカ南部(ルイジアナ州、フロリダ州)およびハワイ(マウイ島、カウアイ島)での資料収集を実施することができなかった。そこで、アメリカ南部とハワイのサトウキビ糖産業に関連する文献資料の収集に努めるとともに、昨年度の現地調査で収集した資料の整理・分析を行った。また、西インド諸島の砂糖と移民についても、文献資料の収集にあたった。ブラジルの事例については、1990年代に実施したノルデステ研究の際に収集した資料を整理し、他地域の事例と比較できるように整備した。以上のように、現地調査は実現できなかったが、研究成果を公表するための作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の遂行にあたって、現地における資料収集は不可欠な研究活動である。今年度は、アメリカ南部(ルイジアナ州とフロリダ州)のサトウキビ糖生産地域とハワイの旧サトウキビ糖生産地域(マウイ島とカウアイ島)において、本格的な調査を計画していた。資料館、博物館、大学図書館、サトウキビプランテーションなどを訪問して砂糖産業と移民労働力に関する資料収集を予定したが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行によって、現地での資料収集を実施することができなかった。これが想定外の誤算であり、研究の進捗状況が「遅れている」理由である。 ただ、アメリカ西部のテンサイ糖生産地域については、収集した資料の分析を進め、研究成果を蓄積してきた。次年度まで研究期間を延長することにより、研究の遅れを取り戻し、当初の研究目的をほぼ達成すことが可能であると考えている。次年度にハワイでの資料収集が可能かどうか、新型コロナウイルス感染症流行の状況を見て判断せざるを得ない。現地調査が難しい場合には、文献資料を駆使して研究の遂行につとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、現地における資料収集作業が遅れているが、研究期間を次年度まで延長することにより、研究の完成を目指す。具体的には、次のステップで研究を進める。①アメリカ西部のテンサイ糖生産地域と移民に関して、日系移民、モルモン教徒、ロシア系ドイツ人などに焦点を当て、コロラド、ユタ・アイダホ、カリフォルニアを対象地域として検討する。②ハワイのサトウキビ糖生産地域と日系移民について、クラウス・スプレックルズやカリフォルニアの粗糖精製産業との関連に着目して検討する。③アメリカ南部、西インド諸島、ブラジル北東部について、文献資料およびすでに収集した資料を用いて検討する。④このような研究を踏まえて、砂糖と移民のグローバルシステムの形成と動態について考察する。その考察の枠組みとなるのは、以前に私が提示した南北アメリカの経済文化地域、すなわち、北西ヨーロッパ系経済文化地域、イベリア系牧畜経済文化地域、プランテーション経済文化地域のモデルである。研究成果は、随時、学会発表や論文として公開する予定である。アメリカ西部に関しては、『砂糖で読み解くアメリカ西部』の刊行を企画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にハワイ(特にマウイ島とカウアイ島)のサトウキビ糖生産地域と日本人移民に関する資料収集を計画したが、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、現地調査を実現することができなかった。そのため、調査旅費を次年度に繰り越し、研究を継続することにした。繰越額については、現地調査が可能になった場合には旅費として使用するつもりであるが、それが難しい場合は、文献資料等の収集に当てて、次年度末をもって研究の完結を目指す。
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