グローバリゼーションに伴って世界と世界の諸地域はダイナミックに変化しており、地域変化を認識し、そのメカニズムを解明することは地理学の課題であり目的である。グローバリゼーションの研究動向を概観すると、グローバルスケールにおける政治、経済、社会に焦点を当てて世界像が描かれる一方で、グローバリゼーションの影響を受けて変化する地域像は十分に解明されていない。本研究は、グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学の考察の枠組みを用いて、南北アメリカの砂糖と移民を研究対象とした。資本、製糖工場、原料調達、労働力に着目して、それぞれの製糖地域の特徴を解明するとともに、製糖地域間の関係や、グローバルな生産・消費との関連性を考察した。ローカルスケールの事例研究と、砂糖をめぐるグローバルスケールの動向を関連付けて考察することにより、グローバリゼーション研究と砂糖研究および移民研究に新たな知見を付加することを目指した。 本研究では3つのステップで研究を進めた。①ローカリゼーション―製糖地域の解明―:ローカルスケールにおける製糖地域の特徴を解明するために、アメリカ西部、アメリカ南部、ハワイにおいて資料収集を実施した。ただ、新型コロナウイルス感染症の大流行により、西インド諸島とブラジルの製糖地域に関する現地での資料収集は実現できなかった。②グローバリゼーション―砂糖をめぐるグローバルな動向の解明―:19世紀以降の砂糖と移民をめぐるグローバルな動向を、南北アメリカのテンサイ糖地域とサトウキビ糖地域に着目して検討した。③グローバリゼーション・ローカリゼーションの地理学的考察:南北アメリカにおける砂糖と移民の事例研究に基づいて、世界の製糖地域を含めた砂糖と移民のグローバルシステムを検討した。以上により、砂糖と移民に着目して、南北アメリカ、そして世界を読み解く視角の有効性を認識することができた。
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