研究課題/領域番号 |
18K01130
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研究機関 | 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館 |
研究代表者 |
福井 幸太郎 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, 学芸課, 学芸課長補佐 (10450165)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 重力断層 / 立山カルデラ / 室堂山 / 放射性炭素年代 / 鬼界アカホヤ火山灰 / 姶良丹沢火山灰 |
研究実績の概要 |
室堂山の重力断層周辺の岩盤に2018年9月、移動量測定用の観測点を10地点に設置した。観測点の位置を2019年9月に測量用GPSで再測定し、現在,重力断層が安定しているのか動いているのかを確認した。また、2019 年9月には、重力断層によって形成された線状凹地内の二つの池(東池と西池と呼ぶ)で、可搬型パーカッションコアリグシステムを用いた堆積物コアの採取も行った。コアの長さは東池が0.5m、と西池が1.6mである。 GPS測量の結果、重力断層のカルデラ側の岩盤は、2018年9月~2019年9月の約 1 年間で2~3cmカルデラ側へ移動していた。このことから,室堂山の重力断層は、現在でもゆっくりとではあるが動いているといえる。しかし,移動速度は非常に遅いため 、1年間に約70cmも動いている赤石山脈アレ沢崩壊地の重力断層(Nishii and Matsuoka 2012)のような活発なタイプではないと推測された。 採取した堆積物コアについては、現在、分析中である。掘削現場でコアを目視したところ,泥炭に富むシルト層(途中に類質テフラを挟む)や線状凹地堆積物の基底と考えられる砂礫層(氷河堆積物?)を確認できた. 東池のコアの深度16cm付近と深度40cm付近から有機物を採取し、放射性炭素年代を測定した。その結果、深度16cm付近が3500年前、深度40cm付近が8300年前という年代値が得られた。深度30cm付近にはK-Ah火山灰(約7300年前)とみられるバブルウォール型火山ガラスが検出された。西池のコアの深度66cm付近には、AT火山灰(約30000年前)とみられるバブルウォール型火山ガラスが検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室堂山の重力断層は,年間2~3cmと非常にゆっくりであるが、現在でも動いているデータを測地データから初めて証明できた。また、今まで全く分かっていなかった室堂山の重力断層の形成年代であるが、東池周辺で8300年前以前、西池周辺で30000年前以前であることが分かった。西池の重力断層は現時点で国内最古である可能性もある。
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今後の研究の推進方策 |
重力断層の動きを測る測量を2020年度も継続して行い、2年連続で動いているのか確認する。また、東池のコアは基底に達していないため、基底に達するまで掘削を行う。西池のコアでは有機物の放射性炭素年代を数深度で実施し、重力断層の形成年代の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月下旬の日本地理学会参加のための旅費を残しておいたが、新型コロナウィルス感染拡大のため学会の開催が中止になった。このため、次年度使用額が発生した。この次年度使用額は2020年度の学会参加費用に充てる予定である。
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