山形県域における産物データべース(江戸時代の産物一覧)から、植物(山菜などの食用植物)に焦点を絞り、以下の2点で今年度は調査を進めた。 ①現在の分布状況との差異を確認する。②食用状況を調べる。 その結果、データべースには記載のある「クコ」(ナス科)は現在の米沢地方では自生が確認されていない植物であった。また「ききょう」(キキョウ科)は現在、山形県の絶滅の危険性(絶滅危惧ⅠB(EN))に指定されている植物である。現在と異なる近世の植物の自生環境が確認された。「かわらさいこ」(バラ科)は河川改修のため、現在の分布は著しく限定されている植物であるが、こうした植物もDBには登場している。このほか、置賜地方での自生はなく、栽植と考えられる「さいかち」(まめ科)などが見出され、自生植物と栽植植物の両者に対して、アプローチしている。 さらに、「どろぶ」(ヤナギ科)は、深山から亜高山帯に自生する落葉高木のドロノキでことであるが、こうした植物が食用とされていたと記載のある資料があり、当時の自生植物の利用状況について考察を進めている。上記に登場した植物については、その産地が分かる場合は、当該地で現在のその植物の利用方法を聞き取りによって調べている。 おもな植物の同定(地方名と和名の照合)は各種参考書のほか、山形県の植物学の第一人者である石栗正人氏にご教示を賜っている。 また、現在の山菜の活用状況についても、各地の産直で調査を行っている。
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