研究課題/領域番号 |
18K01132
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 理絵 山形大学, 農学部, 准教授 (50601390)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 産物 / 動植物 / 分布 / 復元 / 産地 |
研究実績の概要 |
江戸時代中頃より国内の各地では官撰・私撰に問わず多様な地誌や産物帳が作られ、それらには当時、地域の産物として認識されていた植物・動物・鉱物が記載されている。その中には、現在、当該地で生息(自生)が確認できない動植物が含まれている。1700年代中頃に全国同一基準で作成された『諸国産物帳』と各地に残る個別の産物データとを組み合わせ、18~19世紀における動植物の生息(自生)範囲を広域的に復元できれば、近年進行してきた環境改変の広がりを照射させる有益な空間データとなりうる。本研究は、東北を事例に18~19世紀の動植物の分布域復元を通して、動植物の分布相の変化とその要因にアプローチするための地理学的基礎研究である。 研究期間の2年目にあたる今年度はステージ4にあたる「研究期間内に東北6県(宮城県のみ未定)の産物データを作成し、産物ごとの分布を復元する」に着手した。とくに、庄内地域における新たな産物データも見出し、史料的制約に起因する動植物の分布の偏在性を軽減するにいたっている。 また、昨年度おこなった岩手県における産物データの活用として、岩手県全域を対象とした明治期における焼畑地域の概要に関して報告した。岩手県でみられる焼畑は、春播きのダイズ、アワを中心に、ソバ、ヒエの作物を組み合わせて長期的な輪作体系を採る。また他地域では稀な耕起、畝立と施肥を行うという集約的な農法である。岩手県の山間部では、その耕地の少なさから、かつて県北地域、北上高地を中心に焼畑(切替畑)が営まれてきたことが本研究で用いた産物データより復元できた。昭和初期に農林省山林局によって『焼畑及ビ切替畑ニ關スル調査』では、岩手県は1,564町の焼畑面積があり、その89%は農作物の収穫を目的とした自給としての営みであった。他地域では木材活用を目的とする焼畑も盛んであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
年度末に発生したコロナ禍の影響で、各自治体の図書館や資料館、博物館などが相次いで休館したため、予定とおりの研究計画が遂行できていない。また、データベース入力のための学生アルバイトも、学生の大学への入構を自粛するようにとの指示により、依頼できていない。これにくわえ、動植物の同定のために、現地の住民へのインタビューが必要であったが、県内の移動でさえコロナ禍の心理的警戒から、インタビュー自体を断られるケースがあり、また、こちらから遠慮する場合も生まれ、計画に支障が発生している。 さらに、衛星画像の購入なども予定していたが、製品の発注中止や納品の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響によっての遅れを取り戻すために次年度はピッチをあげて取り組む予定であるが、場合によっては研究期間自体を見直し、次年度プラス1年を選択肢に入れて考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍の影響が諸方面に発生したために、計画どおりの遂行ができなかった。このため、次年度に繰り越す使用額が発生したことによる。
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