研究課題/領域番号 |
18K01133
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
葉 せいい 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (30242332)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 台湾 / 植民地 / 南進政策 / アジア / 南洋 |
研究実績の概要 |
本研究では日本の植民地統治における南進政策の分析を通じて帝国日本のアジア認識を明らかにすることを目的としている。2018年度の計画においては、(1)植民地政策や南進政策に関する資料収集を実施しその整理・分析を行うこと、(2)アジア太平洋地域の構造形成に関する歴史的経緯に関する文献調査を実施することであった。 (1)に関しては、日本において植民地政策や教育政策に関する文献資料や、南進政策に関する資料や文献収集を行った。南進政策に関しては、南進基地とされた台湾について焦点をあて、その役割の変化に関する文献資料の収集とその分析を行った。また東南アジア(外南洋)や南洋群島(内南洋)への南進政策に関して、台湾ー外南洋ー内南洋という日本を核とする階層性を明らかにするため、既往研究の整理や資料収集を実施した。1930年代半ばから日本は南進政策を国策とし、南支南洋への軍事的・経済的拡大を図った。そのなかで台湾は南進基地として位置付けられ、南方開拓を目的とした台湾拓殖株式会社が設立された。台湾拓殖株式会社の業務内容と植民地政策・南進政策における役割を明らかにするべく、既存研究の整理を行った。台湾拓殖株式会社は、主に中国華南地方(南支)およびインドシナ半島(仏印)、インドネシア(蘭印)への経済進出の役割を担い、農林業や牧畜業など各種開拓事業を展開していた国策会社である。一方南洋群島は軍事・経済戦略上の重要拠点として位置付けられた。南洋庁と国策会社である南洋拓殖株式会社の本社はパラオに置かれ、製糖業やリン鉱業などの発展により、多くの日本人が移住した。 (2)に関しては、南進政策と関連して日本が南洋群島をも含めた地域における「東亜新秩序」や「大東亜共栄圏」の構想を立てたが、そのなかでの中国華南、仏印、蘭印、さらに南洋群島諸地域の階層化が、政策やその実践のなかでいかに進められたのかについて分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は諸事情により、海外調査を実施出来なかった。しかし日本における資料調査を実施し、植民地政策や南進政策など、日本が植民地統治において実施した政策に関する資料はほぼ収集することができた。これらの資料に関してはデータベース化と分析を進めている。また、教育政策に関しては台湾・朝鮮・南洋群島における教科書などの資料を収集し、その比較分析を行っているところである。その成果については近く学術雑誌への投稿を予定している。 以上のように文献資料の収集とその整理・分析が昨年度の主な活動であったが、予定した以上に日本における資料や文献を収集し、順調にその分析を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、予定していた海外調査を実施することができなかったため、次年度は収集した資料とその分析結果に基づいて、台湾および韓国において資料収集(地図・統計資料)と現地の教育機関(日本統治時代に設立された旧制学校など)での調査を行う。また当時、日本教育を受けた人々への聞き取り調査を実施する。かなりの高齢者が対象となるため、早急に実施したい。 また南進政策に関しては、引き続き文献や既往研究の収集と整理を実施する。オーストラリア国立図書館に所蔵されている南洋の地図や統計資料・文献を収集し、当時、諸外国から日本の南方進出がどのように見られていたのかについてを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、家族の入院に伴う介護・看病などで、事前準備を十分に行うことができなかったことから、海外調査を実施することができなかったためである。次年度は、昨年度実施できなかった海外調査(台湾・韓国)を含め、当初計画していたパラオなどでの海外調査について、十全な準備を行った上で実施したい。また海外調査のため昨年度購入予定であった機器類(レコーダー・カメラなど)も、次年度購入の予定である。
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