本研究は、帝国日本のアジアおよび南洋群島における植民地統治と南進政策を通じて、アジア・南洋の地域的統合をいかに企図し、またいかに実践したのかを分析した。日本は、周辺アジア諸国および南洋地域を帝国に包含していく過程で、「東亜新秩序」を理念として掲げ、南進政策を実施した。南進の最前線となった南洋は物資・資源供給地としての役割を担い、多くの日本人が糖業やリン鉱開発業に従事した。一方台湾は南進基地として位置付けられたが、技術移転に貢献したものの台湾人の南洋への移民はほぼなかった。大東亜共栄圏は、その中に階層化された地域が個々にその役割を担いつつ存在していたが、その「統合」は政策と理念にとどまった。
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