研究課題/領域番号 |
18K01136
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米家 泰作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10315864)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 帝国ツーリズム / 近代日本 / 「満洲国」 / 哈爾浜 / ロシア / 日露戦争 |
研究実績の概要 |
二年次にあたる本年度(2019年度)は、第一に、昨年度に引き続き、近代の中国東北部(「満洲」)への日本人の旅行記とその内容を、精査した。その際、筆者がこれまで収集してきた単行本化された旅行記に限らず、雑誌類に掲載されたものにも視野を広げ、国立国会図書館をはじめとして、未見資料の捜索に努めた。この作業を通じて、「近代日本における植民地旅行記の基礎的研究」(米家2014)で示した旅行記データベースを、さらに充実させることができた。また、入手した旅行記類は、PDF化を進め、手元での作業が効率的となるよう努めた。 第二に、「満洲」における日本人観光客の受け入れ体制を検討すべく、日本人観光客向けのパンフレット・マップや関連資料の収集・検討を進めた。その際、日露戦争の戦場となった「満洲」中央部の地方都市や、ツーリズムの前線となる哈爾浜(ハルピン)・斉斉哈爾(チチハル)に着目し、古書の購入を積極的に行った。その結果、帝国ツーリズムの前線の一つとして、斉斉哈爾が特徴的な性格を帯びていたことが、浮き彫りになった。ただし、新型コロナ肺炎の影響により、哈爾浜・斉斉哈爾で予定していた現地調査は、控えざるをえなかった。 第三に、上記の検討作業を踏まえて、歴史地理学会大会(立命館アジア太平洋大学)の特別セッション「他者の目で見た近代地理認識:東アジアを中心として」に参加し、「帝国日本のツーリズムと心象地理の空間構造」と題して報告した。そこでは、近代日本の帝国ツーリズムにみる心象地理の空間構造は、必ずしも単純な同心円構造ではなく、文明化/停滞、同質性/異文化、他の帝国・文明との対峙/征服という三つの軸が織り込まれていることを指摘した。 第四に、ある程度検討が済んでいる哈爾浜に関して、昨年度行った国際歴史地理学会での口頭発表をベースとして、論文とりまとめ作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度末に哈爾浜・斉斉哈爾で現地調査を計画していたが、新型コロナ肺炎の影響により、控えざるをえなかった。また、すでに分析が進んでいる哈爾濱の事例研究については、論文へのとりまとめを進めてきたものの、予想以上に資料が多く、分析の提示の仕方や論点に絞り込みに、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2020年度)は成果公表を最優先課題として取り組む。
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