研究実績の概要 |
(1)7点の「精絵八旗布防系北京図」に描かれる八旗関連施設の位置と数や街区等の詳細な比較に基づいて、強い類似関係があるものが確認できた。すなわち、『道光北京内外城全図』(中国国家図書館、北京)の内城部分は“Map of Beijing”(19th Century Rare Book and Photograph Shop, NY)と極めて類似し、『京師内城図/Jingshi neicheng tu [Urban plan of the inner city of Peking] 』(Asian Civilizations Museum, Singapore)は“Map of Beijing”(Royal Ontario Museum, Toronto)と非常によく似ている。 (2)世界中の図書館等に所蔵される清代以降の北京図の悉皆調査を行ったところ、三軍(満洲・蒙古・漢軍)の八旗の関連施設の所在を詳細に示す「精絵八旗布防系北京図」群と同系統の性質を持つ大判の北京図が清代以降、民国期に入っても作成されたことを突きとめた。その1つが、『亰師内外城詳細地圖』(中華民国17年、京都師警察廰總務處製、京師内外城二十區警察署測繪)である。大縮尺の市街図の上に警察関連施設、消防・軍関係施設など、都市の防備に関わる諸施設の配置が詳細に描かれている。首都を守備・防衛する機能が維持される必要性とそのための地図作成が継続される必要性とがうかがえる。 (3)上記(2)の北京図の悉皆調査を通じて、清代の「北京図の概念が、領域としての北京には直隷省から庭園や建物までさまざまな空間的レベルが含まれること、地図の種類としては、一般的な市街地総図だけでなく名所図や設計図や路程図等まで含むという、広義性が明らかになった。こうした清代の多様な北京図のなかに「精絵八旗布防系北京図」を位置づける必要がある。
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