研究課題/領域番号 |
18K01137
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉浦 和子 京都大学, 文学研究科, 教授 (50155115)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 北京 / 地図 / 清 / 八旗 / 防衛 / 辺境 |
研究実績の概要 |
(1)清代に作成された北京図の比較分析 八旗の関連施設の所在を詳細に示す「精絵八旗布防」系北京図の研究を進めた。清代に作成された別タイプの「首善全図」系北京図との比較分析を通じて、「精絵八旗布防」系北京図が、地物の要素の分布や方位、距離、質量の精度が高く、図形や線で描かれた符号も非常に精緻であることを確認し、時代背景との関係を検討した。その結果、「精絵八旗布防」系北京図の作成時期が道光年間とその前後に集中していることは、北京全域で八旗の營所官庁や堆撥、柵欄の修復保全が急務となった状況と密接にかかわることが明らかになった(道光2年(1822年)の詔令)ならびに咸豊3年(1853年)の頒令)。こうした実務的な目的に用いるため、「精絵八旗布防」系北京図では、皇城と内城の防衛にあたる八旗それぞれの管轄に属する滿洲と蒙古と漢軍とを地図上に1つ1つ示し、さらに八旗の守備基地(乗馬拠点や現在の派出所的な施設)の位置、胡同入口の柵欄や所属する八旗の詰所など、詳細かつ正確に描く必要があったと考えられる。 (2)古地図に描かれる辺境地域と首都の防衛空間の構造の分析 17世紀中期に作成された「山西辺垣図」群(故宮博物院所蔵、京都大学所蔵)を対象に、内長城に沿った陣(鎮、堡など)の配置の特質について、分水嶺、峡谷、河川、盆地といった地形の条件や、輸送路との関係等から検討した。また、主要陣に記載された東西南北方向への他の陣への路程記をもとに、陣の相互の機能的関係を分析した。内長城の主要鎮(寧武関、偏頭関、雁門関)が相互に連携しつつ、それぞれが内長城内の大小の防衛拠点と連携して守備圏が構成されていたこと、一部には、内長城を超えて北に所在する防衛拠点の連結が見られること、こうした防御ネットワークには陣の改廃等に伴う変化が見られることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集した北京図の書誌情報を分析したところ、清代を代表する北京図様式である初期首善図の一点が、中央アジアの収集家の手を経て、A.フンボルトの寄贈によりベルリン国立図書館に所蔵されているという新たな知見の発見があった。そのため、ベルリン国立図書館での資料調査を計画していたが、COVID-19の感染拡大のため、渡航を見合わせた状態が続いているほか、国内機関での資料調査も制約を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画 引き続き、「精絵八旗布防系北京図」の分析を進める。並行して、山西辺垣垣図群のネットワーク分析ならびに被覆領域分析を行い、首都とフロンティアの防衛図の特質を明確にする。19世紀前半から中期にかけての北京図の伝播と国境地帯を含む辺境の交易経路の関わりを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により、ベルリン国立図書館をはじめ、海外はもとより、国内調査ですら、資料調査が行えなかったため。
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