最終年度では、ソーシャルアントレプレナーシップという文脈から、地方圏における社会課題の解決に努める起業家の起業背景、ビジネスモデル、地方における地域資源の活用に焦点を当て、起業家へのインタビューを踏まえてその実態を把握した。 社会的課題の解決を担うソーシャルビジネスを展開する事業者は主としてNPOなどによるものが多く、収益性に重点を置くことが少ない。しかし、研究対象とした事業者には、収益化もめざし、株式会社化してさまざまなビジネスを展開しているところが多く、地域資源の洞察力と実行力をもとにしたイノベーティブなビジネスモデルを確立していた。このような事業者には年齢的偏倚はなく、男性に傾斜しているものでもない。このなかで女性による起業の形態は、自治体による地域おこし協力隊などでの経験をもとに起業した事例や、本人自身の発案と努力によって起業に至った事例などさまざまである。一方、起業したいと考える女性は少なくない反面、起業までのプロセスがつかめないため、支援する組織やプログラムも必要とされている。 本研究は、我が国の地方圏におけるソーシャルビジネスの地域的特性について、シニアおよび女性起業家に焦点を当てて解明することであった。今後のソーシャルビジネスの行方を考えるうえで重要になってくるものが、SDGs(持続可能な開発目標)である。これは、「葉っぱビジネス」のような地方における衰退地域の再生を地域資源の活用によって達成するものとは一線を画す。必ずしも両者の差異を明確にするものではないが、後者には経験主義的に獲得された知識や技能が発揮されているのに対して、グローバル展開をめざすような前者にはイノベーティブな手法もある。市場規模の小さい国土縁辺地域における持続不可能な場面を克服するためには、地域資源をシーズとした両者のスタイルをもったソーシャルビジネスの展開が期待される。
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