研究課題/領域番号 |
18K01143
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 潤 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (90284562)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 技術革新 / 複雑系 / 共進化 / マルチレベルの視点 |
研究実績の概要 |
本研究では、都市の持続可能な移行(UST)論に依拠し、技術革新と社会変化の共進化を解明することが最終目的であるが、平成30年度には、主に統計データを用いて調査対象地域を決定することを本年度の目的とし、以下のような研究計画を立てた。まず予備調査で、OECDや欧州統計局等の統計を用いて、建築物のエネルギー効率化(building energy efficiency、以下BEE)が高い調査候補地域を抽出する。つぎに現地調査では、予備調査で抽出した調査候補地から、次年度以降、BEEに関するUSTを明らかにする対象地域を選定するため、調査候補地で、30日程度の現地調査を実施する。最後に、現地調査の結果を踏まえて、候補地を絞り込み、対象地域として選定し、研究成果を学会等で公表する。 上述した研究計画にそって調査をすすめた結果、予備調査の際に、OECD、欧州統計局、スウェーデン・連合王国の統計局の統計データから、技術革新を表す建築物のエネルギー効率に関する特許数の多い自治体や、都市自治体が住宅部門のエネルギー効率に影響を与えていることが示唆された。この予備調査の結果をもとに、平成30年8月20日から9月16日に、都市自治体であるスウェーデンのストックホルムとヨーテボリ、イギリスのロンドンとマンチェスターでエネルギー関連政策を専門とする研究者に対して対面調査を実施する一方で、エネルギー関連政策と関連する資料を収集した。最後に調査後の分析では、技術革新を表す独立変数として建築物のエネルギー効率に関する特許数ならびに都市に関するダミー変数も用いる一方で、持続可能な社会を表す従属変数として住宅部門のエネルギー効率を用いたパネルデータ分析を行った結果、技術革新と都市が持続可能な社会に正の影響を及ぼしていることを明らかにし、研究結果の一部を国内の学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査や現地調査を通じて、研究対象地域選定に必要な資料を収集できたことと、これらの資料を用いた調査後の分析で、技術革新と都市が建築物のエネルギー効率に影響を及ぼしていることを明らかにする一方で、都市自治体を研究対象地域として選定できたことが評価理由である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、平成30年度には、都市自治体を研究対象地域として選定した。次年度では、研究計画書にしたがい、これらの地域で、イノベーションの実態に関して研究を進める。これはマルチレベルの視点(MLP)のマクロスケールでの分析にあたる。具体的には、まず30年度までに収集した資料を参照しつつ、現地調査の調査項目を再検討する。ついで、これらの調査項目にもとづく現地調査を通じて、イノベーションの実態を把握したい。
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