研究実績の概要 |
2018年度より中国沿海部の産業発展の地域差と展開可能性についての調査研究を行ってきた。この間、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて、中国をとりまく国際関係の変化により、研究が停滞し、終了年を当初より3年間延長することになったが、今年度、何とか研究を完了させることができた。最終年度は、関連する研究業績として「改革開放初期の中国における観光業振興と地域的背景 : 広西チワン族自治区桂林市の事例を中心に」、‘Evaluation of tourists and resident appreciation of the city name and historical tourism resources in Huangshan City, China’等の業績を発表した。また現在、査読誌投稿中の原稿や出版予定の書籍の中で、本稿の主題に関わる研究成果の発表を予定している。研究期間全体の中で行った調査を通じて、2000年から2019年の新型コロナウイルスの感染拡大までの期間において、一般的に経済発展が顕著とされている沿海部地域間においても産業発展の程度に地域差が生じつつあったことが示唆される。特に国有経済が中心であった北部の環渤海経済圏の中のいくつかの大都市において経済発展の停滞が指摘できるようになっているのに対して、華東地域に位置する長江デルタ地域や華南地域にある珠江デルタ地域においては、比較的高い経済成長率を維持している傾向があることが示唆された。また、その要因として、近年、国全体では国有企業の比率が再度上昇している現象がみられるのに対して、長江デルタ地域や珠江デルタ地域では、環渤海経済圏に比べて民営企業や外資系企業の比率が高い点が推測される。この点については、今後検討すべき研究課題になりえると考える。
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