研究課題/領域番号 |
18K01145
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 教授 (50370622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | wagyu / 和牛 / 食料貿易 / 超高級食材 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,当初の補助事業期間を延長しての4年目にあたり,新型コロナウイルスの拡大に伴う渡航制限により実施できていなかった現地調査を行う予定にしていた.しかし,本年度も海外渡航が難しい状況が続き,現地調査を実施できなかった.各国のwagyu産業の実態については,公式的な統計データに乏しく,関係機関への聞き取りを通じて得られる情報や内部資料に依るところが大きい.情報収集の手段が限られたため,引き続き研究の進め方を見直さざるをえなかった.もっとも,2019年後半以降,日本の和牛肉輸出は急増しており,和牛の需要はコロナ禍においても世界的に拡大していると考えられる.そこで本年度は,日本の牛肉輸出の動向を主に国内の統計や業界の報告等を整理することで,世界のwagyu市場の変化に関する予察的検討を行い,以下のような点が整理された. (1)日本の牛肉輸出においては,2021年には輸出量・輸出額ともに急増しており,国内で生産された和牛のロイン系部位の2割程度が輸出に回されていると推計されるなど,高級な和牛肉の海外市場が急拡大している.(2)これまで海外のwagyu需要は外食消費が中心であったが,和牛肉の輸出拡大はコロナ禍の巣ごもり需要を反映しており,家庭向け消費が急増している.(3)海外のwagyu市場の成長は,海外におけるwagyuの生産意欲を刺激しており,オーストラリアを中心にwagyu遺伝資源の取引・生産が活発化している.日本の牛肉産業について言えば,(4)日本の和牛供給力には限りがある一方で,海外ではロイン系だけでなく国内需要との競合が大きい他部位への需要も増しており,国内価格の上昇圧力となっている.したがって,(5)各企業が国内・海外向けに牛肉販売を振り分けるる論理を精査する必要が大きくなっている. 次年度は,現地調査を試みるとともに,得られた情報の範囲で研究をとりまとめたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各国のwagyu産業の実態については,公式的な統計データに乏しく,関係機関への聞き取りを通じて得られる情報や内部資料に依るところが大きい.ところが,令和3年度は前年度に引き続き新型コロナウイルスの拡大に伴い現地調査が不可能になり,研究の進め方を大幅に見直さざるをえなかった.次年度は現地調査を実施し,とりまとめを行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
可能であれば,オーストラリアおよびブラジルでの現地調査を実施したい.また,産地の動態を体系的に説明するための分析枠組みを洗練させる必要があり,そのための取り組みを継続したい.これらの作業を通じて,最終的には,wagyu産業をめぐる国際産地間競争の動態を整理し,成果として取りまとめたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での現地調査を予定していたが,新型コロナウイルスにより海外渡航が不可能となったため,主に旅費が使用できなかった.次年度は現地調査を可能な範囲で実施したい.
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