世界的な富裕層の増大とともにきわめて高級な食材の貿易が急拡大しているが,そうした輸出産地には,高価格を維持すべく産地の主体間を調整する「産地システム」が不可欠である.本研究では,wagyu輸出をめぐる国際競争を事例に,そうした産地システムの生成過程を分析した.各国のwagyu産業は,遺伝資源が導入されれば即座に競争力を持ち得たわけではなかった.wagyuの産地間競争では,各国で歴史的に形成されていた肉牛の改良,生産・肥育,と畜・加工,販売,消費といった既存のシステムの中に,超高級食材であるwagyuのそれらを埋め込ませていくローカルな過程が,産地システムの構築過程として不可欠となっていた.
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