研究課題/領域番号 |
18K01146
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩船 昌起 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (00299702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 避難行動 / 時空間情報 / パーソナル・スケール / 防災教育 / 東日本大震災 / 津波 / 避難環境 / 体力 |
研究実績の概要 |
本研究では、東日本大震災での津波災害被災地の岩手県山田町と宮古市を調査対象地域として、被災者個人の発災直後からの避難行動の時空間的な実態を、平成34年度までに200事例以上収集することを目的の一つとしている。地図等を参照しつつの聞き取りが調査方法の中心であり、発災当日の個人行動をパーソナル・スケール(1メートルが分かる精度)で移動経路の詳細を把握し、かつ任意の地点ごとでの思いや判断を記録する。また、時刻に係る情報、避難者の年齢性別や体力も考慮しつつ、避難行動の時空間情報の整理と検証を行う。そして、避難環境や避難者の属性の違い等にも注目しつつ、整理された「災害記録」を比較考察し、その結果等に基づいて、学校教育や生涯教育で追体験に活用できる防災教育教材を開発する。 研究初年度の平成30年度には、調査体制の構築と調査事例の蓄積に努めた。また、本研究採択前に調査を進めてきた岩手県山田町と新しく始める宮古市の両地域で30例程度の事例収集にとどまったものの、各地区のコーディネータナーとなり得る人びとから協力を得られた。また、聞き取り調査では、地域の方々の信頼を得ることが重要であり、特に近親者がお亡くなりになった方については比較的話しやすい避難所での生活についてからお聞きし、避難行動については後に教えてもらうようにした。また、話者の都合からキャンセルになり調査機会が延期された場合もあった。従って、空き時間が増え、かつ一人当たりに対応する時間数が増え、聞き取り人数が減ったものの、一人一人の内容についてはより重層的なものとなった。 これらについては、適宜取りまとめて公表する予定である。また、本研究については、平成29年度以前から山田町で調査していることから、平成30年度には、関連する論文等が3編発表等され、学会発表が1件行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の聞き取り件数が年間30事例程度であり、目標の年間50事例を下回ったものの、本研究の初年度としては、研究体制構築の手間もあったことから、おおむね順調に進めることができたと考えている。聞き取りの内容については、避難行動に引き続く「その後の避難所等での生活」や「二次的な避難」も含めて話者からしっかりと話を聞き、より重層的になった。また、本研究採用前に調査活動を行っていた岩手県山田町の他に調査地域を宮古市にも広げて、それぞれの地区でコーディネートしてくれる協力者と知り合うことができ、今後スムーズに調査を展開できる感触を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)も、引き続き聞き取り調査の事例収集に努めることを基本とする。ただし「避難行動」以外にも、比較的話しやすい「避難所での生活」等についてもお聞きするために、一人当たりの時間数が増える見込みである。話者によって近親者がお亡くなりになっている等の個別の事情があるので、話者の意思を尊重して同意を得つつ、無理のなく信頼関係を築いた上で、「避難行動」についての聞き取り調査を進めていきたい。 また、「防災教育教材の開発」については、代表者が鹿児島県防災専門アドバイザーを務めていることから、本研究の成果を生かした教材を試験的につくり、研修等で実践することによって、その効果等を検証したい。
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