研究課題/領域番号 |
18K01146
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩船 昌起 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (00299702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 防災教育 / 避難行動 / 避難所 / 東日本大震災 / パーソナル・スケール / 聞き取り調査 / 図上訓練 / 岩手県 |
研究実績の概要 |
本研究では,避難行動にかかわる防災教育教材を開発するに当たり,東日本大震災被災者の体験を聞き取り,パーソナル・スケールでの時空間情報を整理・記録化することに重きを置いている。令和1年度(平成31年度)までを事例収集を優先する期間として,研究対象地域である岩手県宮古市および山田町に,平成31年4月21~30日,令和元年6月6~11日,7月9~16日,10月31日~11月7日,令和2年2月9~18日に計5回赴き,被災者30人程度に聞き取り調査を行った。前半3回では概ね順調に調査できたが,令和元年東日本台風(台風19号)よる10月13日未明の豪雨で調査地域が甚大な被害を受け,東日本大震災と合わせての“二重”被災者が生じ,10~11月と2月の後半2回の調査では,十分に聞き取りできなかった事例が発生した。これらについては,後日補足調査を行うこととした。 一方,防災教育教材については,避難行動の延長にある「避難所生活」についての聞き取り成果を生かして「避難所生活環境事前準備図上訓練」を開発した。鹿児島大学教員免許状更新講習会4回(計約150名),鹿児島県地域防災リーダー養成講座(約70名),西之表市職員研修会(約100名),徳之島町職員研修会(約150名),鹿児島市第50回桜島火山爆発総合防災訓練(参加者約200名,見学者約200名)」等で実施し,教員,行政職員,地域防災住民等の避難所運営にかかわる意識の向上に貢献してきた。この図上訓練の内容や効果等については,2020年日本地理学会春季学術大会で予稿集公開形式で発表した。また,津波からの避難行動にかかわる教材化については,被災者がその時に何を見て考えて行動したかが精緻な地図とも対応できて時空間的に整理された「パーソナル・スケールでの体験記録」を活用した図上訓練を試作した。現在,授業等での実践し,内容を調整中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究対象地域である岩手県宮古市および山田町では,令和元年東日本台風(台風19号)により,10月13日未明の豪雨で甚大な被害を受け,東日本大震災と合わせて“二重”被災が生じた。そのため,10-11月と2月の2回の調査では,豪雨災害の影響から,東日本大震災当時の被災状況や行動についての聞き取りを十分に行うことができない事例が多く発生した。これらの不十分な調査事例についての再調査を3月に私費で行う予定であったが,話者(聞き取り対象者)の大半が高齢者でもあり,新型コロナウイルス感染防止の観点から控えた方がよいと判断して,再調査を延期(≒中止)した。 従って,聞き取り調査の事例が今年度計画していた数に達しておらず,全体的な分析の段階に進むことができない状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の基盤は,前述してきた通り,被災者への丹念な聞き取り調査にある。しかしながら,2020(令和2)年度については,日本国内で新型コロナウイルス感染症の蔓延が進む恐れがあり,それを防止する観点からも,2020年4月24日時点で県境を越えての移動制限の要請が行政や勤務校等からあることから,鹿児島県に住む代表者が岩手県を訪問することは極めて困難である。また,聞き取り調査対象者の大半が高齢者であり,現時点で新型コロナウイルス感染を非常に恐れている方が多いことから,面会すらままならず,安全で有効な治療方法が確立するよりも前に,聞き取り調査を進めることはできないと考えている。 従って,研究費で計上していた「旅費」については,新型コロナウイルス感染症の治療法が確立されるまでに活用することができず,今年度については,全ての旅費を活用できない可能性が高いと考えている。本研究における今年度2020年度の予算は全て「旅費」であるので,仮にこれを活用できない状況が継続した場合,研究計画を1年延長したい意向である。 しかしながら,不十分ながらもこれまで蓄積した調査結果や成果等を生かして,防災教育教材の開発については実施することができる。対面授業が困難な現在,オンラインでの「遠隔授業」が求められており,これに活用できる教材の開発についても,初年度に購入した4Kカメラ等を活用して,実行していきたい。
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