研究課題/領域番号 |
18K01147
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮内 久光 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (90284942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生活インフラ / コンビニ立地 / 離島間格差 / 離島行政 |
研究実績の概要 |
本年度は、全国の100人以上の人口を有する177離島がどの程度の生活インフラの充足状況にあるのかを、ハード面から明らかにした。まず離島インフラ状況データベースを作成した。生活インフラ指標は、①インフラ基盤として、空港と航空路、港と航路、バス路線、通信状況、上下水道施設、ゴミ焼却施設、②生活拠点施設として、役場・支所、公民館・集会所、小学校、病院・診療所、介護・福祉施設、図書館、スーパー、コンビニエンスストア、銀行・郵便局である。 データベース分析による結果の一部を紹介すると、水道普及率は平均97.1%とほぼ完備されてきているのに対して、水洗化率は65.5%、汚水処理人口普及率は63.2%にとどまっている。いずれも分散値が大きく、離島間格差が著しい。人口数との相関係数はどちらも無相関を示しているので、両者の整備は政策との関連が強いといえる。特に長崎県の離島での未整備率が際立っている。島内に小学校がない離島は20島である。このうち、12島は今世紀に入ってから統廃合により廃校となり、教育行政と関連している。スマートフォンによるネット接続は全離島で可能である。しかし、受信時最大988Mbps以上の超高速サービスは奄美大島や佐渡島など大型離島でも受けられず、本土との通信格差が認められる。近年、ライフラインとしての機能が注目されているコンビニエンスストアは23島のみ立地している。御所浦島を除けば、いずれも人口が2,500人以上であるが、道後や大崎上島などコンビニ立地に必要な人口数を満たしている離島でもコンビニが立地していない島もある。これはコンビニの物流との関係が指摘できる。コンビニ立地に関して沖縄県離島を事例に研究結果を論文で発表した。 このほか、生活インフラの状況について、奄美大島宇検村と瀬戸内町で予察的な現地調査を行った結果、集落間でも状況に違いが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は全国スケールで離島の生活インフラに関するデータベースを作成し、その分析を行うことで、現在の離島がどの程度のインフラ整備状況にあるのか、本土との比較や離島間の比較を行うことができた。また、奄美大島で現地調査を行い、自治体レベル、集落レベルで生活インフラの実態を予察的に捉えることができた。また、生活インフラの中でも近年、ライフラインとしての多機能化が注目されているコンビニエンスストアの立地展開について、沖縄県離島を事例に研究を進めた。その結果、本土とは異なる離島の立地展開の独自性を、島嶼性と絡めて考察することができた。その成果は学術論文や著書などで公開することもできた。以上の理由から本研究課題の進捗状況を上記の区分のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に引き続き、離島における生活インフラ整備状況を分析・考察すると同時に、本研究課題の研究目的の一つである生活インフラの多機能化の実態を調査する。 そのために、離島を有する自治体をはじめ、離島に所在するすべての商工会、農協、教育委員会、社会福祉協議会、島おこし関係NPOなどを対象に、生活インフラの充足状況や課題、生活インフラの多機能化に関する政策や経営戦略、などについてのアンケート調査を行う。その結果を集計して、離島における生活インフラの現状と課題、再編・活用(多機能化)の状況をハード面、ソフト面の両面から明らかにする。また、人口規模、本土との近接程度の指標で離島を類型化し、各類型の特徴を明らかにする。類型ごとにサンプル離島の現地調査を行い、生活インフラの実態をハード面・ソフト面の両面から明らかにする。現在のところ、引き続き奄美大島のほか、加計呂麻島、沖永良部島などで現地調査を実施する予定である。
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