研究課題/領域番号 |
18K01147
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮内 久光 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (90284942)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 生活インフラ / 交通インフラ / 多機能化 |
研究実績の概要 |
第1の研究課題である生活インフラの状況については、前年度に引き続き,離島の生活の基盤となる交通インフラを取り上げて日常生活圏レベルとして、最寄りの中心都市での滞在可能時間(PST)という指標から,広域圏レベルでは,空港整備と航空ネットワークの変化から考察した。 PSTは、2020年12月現在の状況を計測したうえで、2005年2月計測結果と比較した。2020年では、フルタイム勤務が可能な就業時間帯Ⅰは72島から39島へと約半減し、PSTも70分程度も減らしている。この理由として、中心地側の港からの最終便の出発時刻が全体的に早まっていることが考えられる。航空輸送に関しては、2000年代以降、観光地化された島々からは、東京や大阪など三大都市へ、さらには香港、台北への国際線が相次いで開設された。しかし、2020年に入り,新型コロナによる移動制限により,路線縮小化にある。 2010年代以降,航路においては小規模離島を結ぶ公営航路が,航空路では高速船との競合や航空会社の経営状況の悪化などにより近距離路線を中心に廃止され、飛行機の運行がない空港が多くなっているなど,交通インフラの弱体化が課題である。以上の研究成果を,沖縄地理学会で報告し,日本地理学会英語叢書に投稿した。 第2の研究課題である多機能化による集落機能維持については、昨年度までの沖縄県座間味島での調査をまとめた。座間味島では,漁業者がダイビングサービス業に直接参入する職業の複合化,島の女性が民宿を開設してその子供がUターンでダイビングサービスを行う世帯内分業化という様々なタイプの多機能化により生計を維持して,ひいては集落機能維持に貢献していることが明らかになった。以上の研究成果を日本地理学会で報告し,月刊『地理2月号』で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は新型コロナ蔓延の影響で、大学の授業がオンラインに変更したため,その対応に時間がとられ,研究時間がほとんど確保できなかった。離島を有する自治体をはじめ、離島に所在するすべての商工会、農協、教育委員会、社会福祉協議会、島おこし関係NPOなどを対象に、生活インフラの充足状況や課題、生活インフラの多機能化に関する政策や経営戦略、などについてのアンケート調査を行う予定だったが,新型コロナによる社会状況の変化に関する質問も加える必要が出て来て,アンケート票の見直しを余儀なくされた。アンケート対象機関・組織も新型コロナ対応に忙殺されているという状況を鑑み,今年度もアンケート調査を行わなかった。また,当初予定をしていた座間味島、奄美大島、加計呂麻島、大崎上島などでの現地調査が全くできなかった。 結局,昨年度までの調査結果を学会で報告したり,学術雑誌に投稿したりしただけなので,進捗状況が「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度が本研究課題の最終年度であるため、延期していた離島を有する自治体をはじめ、離島に所在するすべての商工会、農協、教育委員会、社会福祉協議会、島おこし関係NPOなどを対象に、生活インフラの充足状況や課題、生活インフラの多機能化に関する政策や経営戦略、などについてのアンケート調査を行う。また,新型コロナが収束しだい、現地調査を行い,これまでの研究成果と合わせて最終的な研究成果を発表する予定である。 ただし、離島は新型コロナに対する医療体制が脆弱であること、高齢者の割合が多いことなどから、状況によっては令和3年度も現地調査ができない可能性がある。その場合は、電話やビデオ通話などによるリモート調査に切り替えるなど、代替的な方法で調査を行うことで研究課題にアプローチしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で,予定していた現地調査が全く行うことができなかった。また,学会発表もオンライン形式となった。そのため,旅費の支出が全くできなかった。このほか,予定していた全国離島市町村などへのアンケート調査も延期したため,その郵送費などの支出も執行できなかった。 次年度は研究期間最終年度のため,離島市町村へのアンケート調査は早めに行うとともに,新型コロナが落ち着き次第,現地調査に入るなどして旅費の執行を図りたい。
|