研究課題/領域番号 |
18K01147
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
宮内 久光 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (90284942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生活インフラ / 小さな拠点 / 離島 |
研究実績の概要 |
今年度は,生活インフラの多機能化について,その具体的取り組みとして政府が推進している「小さな拠点」政策をとりあげ,離島地域での取り組みの特徴について検討した。国土交通省によると,小さな拠点とは「日常生活に必要な機能・サービスを集約・確保し,周辺集落との間を交通ネットワークで結んだ地域の拠点」とされている。すなわち,拠点の整備だけではなく,周辺集落とアクセス手段を確保することで日常生活圏全体の機能を維持・発展させるという,地域再編成の手法がとられている。 国交省による実態調査(2020年5月現在)において,一覧表で公表されている拠点は1,680箇所である。このうち,架橋島を除く有人離島では,北海道から沖縄県まで14道県の28市町村に77箇所(全体の5.6%)が形成されており,これを集計分析した。小さな拠点の集落生活圏人口は77箇所全体で84,226人であり,拠点1箇所あたりの平均は1,093人である。全国平均が2,395人なので,離島の拠点は小規模といえる。地域運営組織の内訳は,全国では法人格のない任意団体(87%)が主ではあるが,NPO法人のほか,社団法人や株式会社など9種類の法人格団体が運営にかかわっているのに対し,離島では法人格のない任意団体が94%を超え,法人団体は2種類に過ぎなかった。運営組織の活動内容として,全国では「公的施設の維持管理(指定管理など)」が最も多く,全体の27%を占めていたのに対して,離島では「祭り・運動会・音楽会などの運営」が39%を占めた。これらのことから,離島地域の小さな拠点は小規模であり,運営組織も非法人組織が中心で,集落行事を行うことを目的とした集落住民の「精神文化の紐帯」づくりを重視する傾向にあることがわかった。コロナ禍のため,現地での実態調査が全くできなかったため,今後は現地調査に基づく現状と課題を検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度もコロナ感染症の拡大が続き,長期にわたり全国各地でまん延防止等重点措置が実施されました。特に離島地域はコロナに対する脆弱性が高いこと,沖縄の感染状況が深刻であったことを総合的に勘案して,現地調査を自粛しました。そのため,「小さな拠点」をテーマにした生活インフラの多機能化については,公開されている各種HPで提供されているデータや,各種文献資料からの分析・考察にとどまり,予定をしていた現地調査による実態解明の部分ができませんでした。また,今年度は予定をしていなかった学内での役職などを兼務することになり,研究時間が十分に確保できませんでした。 このような理由から,今年度の研究は充分行うことができず,本研究課題の柱の一つである「生活インフラの多機能化」について十分解明することができませんでした。そこで,最終研究年度としての進捗状況は遅れていると判断しました。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長させていただき,令和3年度に実施できなかった離島地域において「小さな拠点」づくりをおこなっている自治体を訪れ,自治体担当者,地域運営組織のスタッフ,離島住民など様々なアクターに聞き取り調査を実施し,この事業の現状と課題を検討していきたい。現在のところ,聞き取り調査対象は,「買い物支援,送迎サービス」を行っている宮古島市大神自治会,狩俣自治会,「チャレンジショップ」を経営している瀬戸内町山郷地区,コミュニティバスを運行している対馬市上県町などを予定している。聞取りでは,どのようなアクター間の協働と調整により小さな拠点が形成されているのか,課題や問題点はどのようなものがあり,それをどのように乗り越えようとしているのか,これらのことは離島地域の集落再編や空間整備に一般化できるのか,を検討していきたい。また,研究成果は学術雑誌に掲載すると同時に,離島地域に何らかの形で還元できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度もコロナ感染症の拡大が続き,長期にわたりまん延防止等重点措置が実施されました。特に離島地域はコロナに対する脆弱性が高く,現地調査を自粛しました。そのため,年度予算で計上していた旅費の執行ができず,結果的に次年度使用額が生じることになりました。研究期間を1年間延長させていただき,コロナ感染が少し落ち着いた段階で予定していた宮古島,奄美大島,対馬などへの現地調査の日程を早急に組み,実施したいと考えています。
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