研究実績の概要 |
最終年度は離島地域における生活インフラの多機能化に関して、政府が進めている「小さな拠点」形成事業を取り上げ、内閣府から提供された実態調査のデータ分析と現地調査から実態と課題を検討した。 2022年度では、離島地域には14道都県に98箇所の小さな拠点が形成されていた。1箇所当たりの平均人口は1,518人と少ない。集落生活圏の対象範囲は全国傾向である小・中学校区よりも広く、島スケールを生活圏として捉える傾向が認められた。現在ある拠点施設(24種)のうち、全国より20ポイント以上高いのは役場支所、小学校、中学校、宿泊施設であり、隔絶性が高い地域ゆえに公的施設を拠点とする傾向にあった。生活集落圏内の公共交通として、民営路線バスと船舶が充実している。これは既存の民営路線バスが公的補助を受け、経営努力をしていることを示している。 小さな拠点事業の補助を受けた久米島町における移動販売車について現地調査を行った。2017年度に2ルートからスタートした移動販売車は、現在3ルートに拡充され、9集落を対象に年間約2.8万人の利用がある。単年度ベースでは経営は辛うじて黒字であるが、人件費や燃料費の高騰、販売車の買い替えなど、今後の事業の継続性には厳しいものがあり、行政の支援の必要性が認められた。 研究期間を通して、離島地域における生活インフラの状況と、多機能化による集落機能維持について実態と課題を検討した。前者では離島インフラ状況データベースを作成し、充足状況の検討をおこなった。さらに、交通インフラとコンビニエンスストアを取り上げ、離島地域の特徴を明らかにした。後者については、ダイビング観光が盛んな沖縄県座間味島で調査を行い、世帯内分業化という生計維持戦略で集落機能維持を図っていること、政府の小さな拠点事業について、離島地域の実態と課題を検討した。以上の研究成果は図書4冊、学術論文3本で公表した。
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