ポーランドにおける全国レヴェルの行政域改革への中心地理論の応用に関しては、同様の試みがなされたスウェーデンの場合と比べ、勢力圏の実態調査に基づく経験的な方法を重視するものであることがわかった。 Worobyによるカナダ・サスカチュワン州の行政域改革案提案に中心地理論を応用する研究では、提案に先立って同州南西部地域を対象にして中心地システムの実態を解明している。それによれば、中心地は保有する小売・サーヴィス業種の数により、小村、村、町、大町、市の5階層に区分される。そして、村段階以上の各階層の中心地の理論的勢力圏をティーセン分割近似の方法で設定した上で、対象地域の中央部に位置する市段階中心地スウィフト・カレントの勢力圏の内部構造を理論的に検討している。勢力圏内の各階層の中心地総数をK=3の中心地システムの理論値と比較してみると非常によく似ており、同じく中心地間距離もほぼ√3の倍数で推移していることがわかった。さらに、スウィフト・カレントの勢力圏は、人口密度、自然条件、近隣の市段階の中心地ムース・ジョーとの競合の影響を受けて、正六角形が変形した形のものであることがわかった。 本来ならば2020年度に予定していた、1940年代末~1950年代イギリスにおける都市・農村計画法施行に伴う各州の州地域計画と中心地研究との接点を探る研究は、前年度までの研究の遅れに加え、コロナ禍のためイギリスでの現地調査を断念したことにより、進展しなかった。しかし、附属図書館経由で入手したイングランド北西部チェシャー州の『地域計画報告書』(1948)において、3階層からなる農村中心集落配置の理想モデルとしてK=3の中心地システムが挙げられている事実を突き止めた。このイギリスを対象とする研究は、2021年度から新たに始まる科学研究費助成研究で継続して行なう予定である。
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