研究課題/領域番号 |
18K01150
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
大場 茂明 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10185366)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 住宅政策 / 都市居住 / コミュニティ再生 / ジェントリフィケーション / ハンブルク / 公有地政策 |
研究実績の概要 |
本年度の成果は、以下の二点に集約することができる。第一に、これまでの研究成果をまとめ、令和元年8月に著書『現代ドイツの住宅政策―都市再生戦略と公的介入の再編-』(単著、284頁、明石書店)を公刊した。2010年代の住宅政策の動向を扱う本書の第二部(第7~10章)は、本研究ならびに平成27~29年度科学研究費補助金によるハンブルク大都市圏での現地調査に基づくものである。 第二に、令和元年9月中旬より約10日間にわたってドイツ連邦共和国に滞在し、ハンブルク州アルトナ行政区ほかにおけるジェントリフィケーションの動向と居住施策に関する資料をアルトナ行政区、ハンブルク都市更新・都市開発公社(steg)ほかの関係機関にて収集するとともに、事業担当者の案内でこれまで実施された地区再開発事業地区、住宅新規建設事業地区の現地調査を行った。また、あわせてハンブルク州都市開発・住宅庁(BSW)、郊外のアルトナ・ルルプ地区で活動する住民団体を訪問し、ハンブルク州の住宅政策や地区再開発事業に携わる関係者へのインタビューや意見交換を行った。 今年度に実施した現地調査の成果の一部については、「再都市化の進行にともなう地区居住施策の動向-ハンブルク・アルトナ行政区を事例として-」(単独;日本都市学会第66回大会)および「「都市再生事業における公的介入の再編―2010年代のハンブルク住宅政策を中心として―」(単独;「包容力ある都市構想」研究会」)として学会発表を行うとともに、大阪市立大学都市研究プラザ発行の『URP「先端的都市研究」シリーズ21』に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
文献・資料や公文書類の収集・分析により、ハンブルク大都市圏における都市居住施策の最新動向を把握することができた。また、こうした施策がコミュニ ティレベルの住宅市場や住民構成に及ぼす影響についても、前年度に引き続きハンブルク州都市開発・住宅庁や同州アルトナ行政区への訪問に加えて、今年度は民間住宅企業経営者ならびに公益住宅企業・前理事長へのインタビューを実施することによって、より詳細に把握することができた。 前回の科学研究費補助金(平成27~29年度)による調査において協力を得たハンブルク州行政関係者のコーディネートにより、郊外住宅地域(アルトナ行政区・ルルプ地区)でのインテンシィヴな現地調査を実施し、住宅新規建設事業の実態を見学するとともに、現場で事業の進捗状況、当面する問題点などについて、事業担当者や現地で活動する住民団体との質疑応答を重ねた。それらを通じて、本研究課題に関する事業理念と実態、当面する問題点などに関する知見を深めることができた。 日独両国は産業構造のリストラクチャリングにともなう既成市街地の再生という共通の課題を抱えており、地元住民団体と意見交換する機会を持つことができたことはきわめて有意義であった。そこでは、居住施策に基づくコミュニティ再生事業の評価をめぐって、率直な意見を聞くことができたことなど、短期間の現地調査ではあったが大きな成果があった。現地調査を通じて得られたこれらの情報や収集資料は、著書の刊行、学会発表や論文執筆において大いに活用することができた。 他方、連邦レベルでの住宅政策の動向については、関係機関(ドイツ連邦政府建設・空間整備局BBRほか)への訪問は実施できなかったものの、必要に応じてインターネット等を通じて入手した行政資料をもとに分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の分析対象となる居住施策には、ここ数年相次いで新たに施行されたものも含まれており、それらが地区の住宅市場や住民構成に及ぼす影響を如何に評価するかが、解明すべき重要なテーマとなっている。これに関しては、現地研究協力者とも密接に連絡を取りながら、引き続き最新情報をフォローしていく予定である。 あわせて、過去2年間に実施した調査対象地区における更新事業担当者への追加ヒアリングを引き続き行うとともに、地区再開発協議会や住宅公益企業など、 関係団体・住民組織に対するインタビューも進めていく予定である。 こうした現地調査を通じて、大都市圏内における地区コミュニティレベルでの居住施策が再編されるプロ セスとそのコミュニティへの影響に関する地区間比較分析をさらに深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 現地調査時に複数箇所で行った事業担当者へのインタビュー内容を業者に依頼してテープ起こしする予定で予算を確保していたところ、使用言語であるドイツ 語担当者の作業日程確保の都合上、一部が年度内に納品出来ない可能性があったため。 (使用計画) 次年度において、当該年度に実施できなかった事業担当者へのインタビュー内容のテープ起こしを行う際に使用する。
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備考 |
研究代表者がこれまで実施してきた研究プロジェクト(国際学術シンポジウムの記録を含む)、海外学術調査、野外調査実習の概要を紹介。
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