研究課題/領域番号 |
18K01151
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
田原 裕子 國學院大學, 経済学部, 教授 (40282511)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 渋谷 / 再開発 / 都市間競争 / 都市政策 |
研究実績の概要 |
昨年度は渋谷で働くクリエイティブワーカーを対象として活動空間に関する聞き取り・調査票調査を実施する予定だった。しかし、コロナ禍により調査対象者の選定や調査方法、内容について再検討する必要が生じ、計画の遂行が困難になった。そのため、「人」を対象とする調査は延期することとし、対象をクリエイティブワーカーの活動の舞台である「空間」に移して研究を続行した。 空間の形成に焦点を当てた理由は、グローバルな都市間競争が加速する現代において経済成長を目指す諸都市が、中枢管理機能やクリエイティブ産業等を引きつけ続けるために、継続的にイノベーションを生む環境を整備、促進することに注力しているからである。渋谷再開発でもシェアオフィスやサービスアパートメント等、クリエイティブ産業・ワーカーの集積に資するための空間の創出が目指された。そうした構想を「世界都市」を目指す東京・国の戦略と、東京の中での生き残りをかけた渋谷の戦略の結果と位置づけ、戦略の背景や経緯を明らかにすることにした。 そのために、まず、首都圏整備政策、バブル経済崩壊後の経済再生政策、2000年代以降の都市再生政策、大都市イノベーション戦略などの都市政策の流れを、国内外の環境による影響など政策の背景を含めて整理した。そして、行政、ディベロッパー、立地企業、地域団体等が一体となり、いわば「企業」としての都市・渋谷を形成し、都市政策やグローバルな環境に巧みに対応しながら、国の特例・優遇措置を次々に呼び込むことで都市開発を進め、「世界都市・東京」の中で、より高次の中心地となったプロセスを明らかにした。 コロナ禍の影響により、計画していた調査の実施が困難になった中で、クリエイティブワーカーの活動の舞台である空間がいかに計画・形成されたのかを明らかにすることができたことは大きな収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
緊急事態宣言等による外出規制・自粛の影響でカフェやコ・ワーキングスペース、シェアオフィス等の利用が制限・抑制された考えられるため、クリエイティブワーカーの活動空間に関する調査、ならびに再開発に伴うコミュニティの変化に関する調査の実施を延期せざるを得なかった。緊急事態宣言や自粛要請が累次にわたったため、年間を通じて調査を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度後半に感染拡大が収束に向かった場合には、当初の計画に基づいてクリエイティブワーカーの活動空間に関する調査を実施する。ただし、明らかになったワークスタイルやライフスタイルについては、再開発に伴う空間形成に由来する部分と、コロナによるリモートワークの普及による部分が混在すると思われるので、現在の活動空間に関する項目に加えてコロナ以前の状況を回想してもらったり、コロナによる影響を合わせて答えて尋ねることで、再開発に伴う空間形成に由来するワークスタイルやライフスタイルの変化を抽出したい。 一方、クリエイティブワーカーを対象とする調査の実施が困難な場合には、シェアオフィスやコ・ワーキングスペースの運営主体を対象とする聞き取り調査に切り替える。コロナ禍をきっかけにリモートワークやワーケーションが進展し、企業やクリエイティブワーカーの脱都心の動きが指摘される状況において、都心のオフィス機能をどのように変化させていくのかについて調査する。1990年代以降、世界的に進んだ「再中心化」の動きや、日本における都市再生政策を起爆剤とした都市再開発の動きにどのような影響が及ぶのかについて明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた調査が実施できず、謝金等の支出がなかったため。 参加した・予定していた学会がオンライン開催となったため、旅費・学会参加費が支出されなかったため。
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