研究課題/領域番号 |
18K01154
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
藤田 佳久 愛知大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70068823)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東亜同文書院 / 東亜同文会 / 東亜同文書院生の大旅行調査 / 日清貿易研究所 / 支那省別全誌 / 支那経済全書 |
研究実績の概要 |
20世紀前半期の中国は長期に支配した清朝が崩壊し(1911年辛亥革命)、民国時代へ入るが、政変の急変により混乱期にあった。19世紀末の日清戦争は民国期になっても日本の介入が続き、後半は日中戦争期となり、また、国内では折からの軍閥間の戦争もあり、複雑な政治状況が続いた。そんな中で清末から始まった経済の近代化は列強の進出もあって地域差をもちつつ展開した。 その近代化の基点は列強の租界が集積した上海にあった。上海は東支那海の干満差が緩和される好条件の入海を港とし、また揚子江流域を後背地とすることが可能な位置にあったこともあり、貿易を中心とした列強による西欧型の輸出入港として中国全域に影響を及ぼすほどの存在を示すに至った。当時は海洋と河川貿易が主であり、このような中で上海を中心とした中国国内各地域との水運ネットワークが次第に整備拡大した。上海には列強の商業・金融・貿易資本が集積し、航路の内航への拡大により列強国のみならず、例えば国内資本の紡績業が内陸から搬入される綿を原料にして発展した。航路の拡大は多種多様な原料の集散地として上海を近代工業都市へも育てあげる一方、漢口など流域内陸部への航路整備により、各地域に2次的な経済中心地が形成され、上海とのネットワークを強化しつつ全体としての中国近代化へのベースを形成した。それは2次的中心地をその周辺地域に3次的中心地を核として、さらたに形成する形で新たなネットワーク形成とともに近代化地域の拡大を促した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、コロナウイルスの影響により、戦前期中国の文献(個別論文,データ)調査の予定であった国会図書館を中心とした東洋文庫、外務省関係施設、アジア経済研究所、また大阪の府立図書館、大阪商工会議所図書室などでの継続的文献調査ができなくなり、一部は調査が実現できたが、全体として、詰めが困難になったためである。
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今後の研究の推進方策 |
上記のうち、上海を中心地とした揚子江流域において最大の2次中心地である漢口について、その近代化を上海との貿易ネットワーク、さらに漢口を中心として波及する第3次中心地の近代化を各ネットワーク形成との関連で明らかにする。さらにまた上流の湖南省のように湖の水位の増減差が大きく外部とのネットワークが困難であった省に、日清貿易研究所卒の白岩龍平が上海との航路を開設したことで、近代化が始まったケースもあり、揚子江流域の統合が進んだ。これらの詳細については、東亜同文書院生による大調査旅行記録、支那省別全誌ほか関係資料をあらためて精査し、検討し、揚子江流域での中国近代化を説明するモデルを示したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
.コロナウイルスにより28万円ほどの助成金が未執行であったが、現時点でコロナウイルスが一気に衰退するとも思われず、東京、大阪などへの出張は困難になりそうである。そこで助成金の未執行分については、その多くを関係者資料、書籍の購入に充当し、8.で示した当初の計画を進展させたい。
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