福岡県宗像市・福津市・古賀市における地域包括支援センターを中心とした現地調査を実施し,次のような点を明らかにした。コロナ禍の影響として,緊急事態宣言の発出期間等を中心に,様々な活動が制限される中で外出機会の減った高齢者には身体的精神的な問題が蓄積され,その反動として,包括によっては,2022年度に入って重篤な内容を含む相談が増加したが,他方で2018年度末までの圏域分割と法人による委託運営を開始した宗像市では,3年あまりが経過する中で地域住民による認知度も向上している感触を得ている包括が多い。福津市では,コロナ前と同様に,引き続き同一の医療法人が市内全域を1つの圏域とする形で包括を受託運営している。当該の包括では,3中学校区ごとに地区割りをして3職種を1名ずつ配置し,これら地区担当を2年ごとに変更している。これは,包括の職員が特定の地区に限定することなく,市内全域について把握する体制づくりを念頭にしている。古賀市では,2006年度当初から市直営による1圏域での体制を維持してきたが,2010年代後半には直営による包括の職員確保が難しくなり,体制の再構築が検討された結果,2020年度に圏域を3分割して委託することが決まり,介護保険制度の第8期事業期間の初年度である2021年度から3つの法人に各1包括を委託する体制に移行した。ただし,その委託先は,同市におけるかつての在宅介護支援センターを受託していた法人等が念頭に置かれていたが,複数の法人が包括の受託を辞退したことで,同市社協のほか,市外に本拠を置く法人を含む新規の法人が新たな担い手となった。以上のような圏域の分割再編と包括の再配置をめぐる行政と委託先法人による調整過程は,近隣の宗像市だけでなく,三重県鈴鹿市・亀山市の事例等も含め,複数の包括を整備する必要性のある中規模人口の都市において共通してみられる事象と指摘できよう。
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