研究課題/領域番号 |
18K01159
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
村田 陽平 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10461021)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 健康の地理学 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の三点の調査を日本国内において実施した。第一に、化学物質過敏症(CS)を発症した経験のある当事者への半構造化インタビュー調査を実施した。そこから、当事者は、さまざまな社会環境要因によって化学物質過敏症を発症しており、多様な身体的/心理的症状に苦しんでいることが明らかになった。また、当事者を取り巻く社会環境(職場や地域など)が、必ずしも当事者の症状を十分に理解していないことや、日本国内には医療機関や養生施設が数少ないことも判明した。第二に、電磁波過敏症(ES)を発症した経験のある当事者への半構造化インタビュー調査を実施した。そこからは、当事者が、電気を計測するスマートメーター(電子式電力量計)やwifiなどの無線環境によって、多様な身体的/心理的症状で苦しんでいることがわかった。また、これから導入される予定の5G(第5世代移動通信システム)のもたらす影響について、心配をする声が多く寄せられた。第三に、香料に苦しむ当事者への半構造化インタビュー調査を実施した。現代社会において、香料は柔軟剤や洗剤などに多用されるようになっており、マイクロカプセルを利用した技術により、その匂いは年々強くなる傾向にあるため、電車や職場などの閉鎖的な公共空間においては、香料が当事者に多様な身体的/心理的症状を引き起こしていることがわかった。とりわけ、日本社会では「香料は良いもの」として受け止められ、香料の有害性が十分に認識されず、社会問題として広く共有されていないため、消費者団体が独自に調査を実施し、行政機関や国民に対して積極的に啓発活動を行うようになっていることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の課題であった、化学物質過敏症、電磁波過敏症、香料被害の当事者にたいする半構造化インタビュー調査が予定どおり実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、化学物質過敏症、電磁波過敏症、香料被害を経験した当事者が、どのようにして自らの健康を回復していったのか、またいかなる社会環境を構築すれば被害を減らせるのか、という課題を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、化学物質過敏症、電磁波過敏症、香料被害にかんする当事者調査が、関西と関東のみでしか実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、コロナ感染の問題により対面式調査が難しいと予想されるため、オンライン(インターネットや電話)を使用した調査を計画している。
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