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2019 年度 実施状況報告書

ヒマラヤ地域の祭礼に関わる家畜交易:異宗教間関係と地域間関係

研究課題

研究課題/領域番号 18K01160
研究機関阪南大学

研究代表者

渡辺 和之  阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)

研究分担者 橘 健一  立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)
杉江 あい  名古屋大学, 高等研究院(環境学), 特任助教 (10786023)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード交易 / 流通 / 家畜市 / 国境
研究実績の概要

本研究の目的はネパールからインドを経てバングラデシュに至る家畜交易の流通事情を明らかにすることで、ヒマラヤ地域における諸宗教間の関係を明らかにするものである。前回の2018年8月にバングラデシュ側で行った調査では、牛や山羊などの家畜は人や物資とは別の国境を通って来ること、現在ではインド側がモディ政権の牛の福祉政策の影響から牛の輸出禁止を取り締まっており、バングラデシュ側でも国内農民の保護の理由からインドからの牛の輸入を制限しはじめたなどの情報を得た。しかし、家畜市を見ると、国産の牛に交じり、インド産の牛も混じっていた。国境での取り締まりは厳しく、インド産の牛はほとんど来ていないのにどうして牛市にはインド産の牛がいるのかが謎であった。このため、インド側の状態を見る必要があると、2019年2月にバングラデシュからインドの西ベンガル州に調査に行った。結果として、次の点がわかった。まず、現在でもインドからバングラデシュへ牛が来ていることがわかった。インドのシルグリ郊外では牛市が開かれている。そこで売買された牛は密貿易の形でバングラデシュ側へ送られる。次に西ベンガル州ではモディ政権下でも、州政府の許可証があれば、ムスリム向けに牛肉を販売することができる。牛の解体も許可証があれば問題ないとのことであった。この点で西ベンガル州政府はモディ政権下でも他宗教徒の権利を保証していた。牛はネパールから来るものとビハールから来るものがある。インド側の牛はネパールの平原部で見る牛のサイズと変わらなかった。バングラデシュ側で見るインドの牛のサイズは異様に大きく、おそらくバングラデシュ側に渡ってから特殊な方法で肥育させたものであることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ネパールからインドを経てバングラデシュに至る家畜交易の流通経路のうち、インドとバングラデシュの間が明らかになった。1年目にバングラデシュ側から2年目にインド側から調査をすすめたことで、当初計画の半分程度が明らかになった。残るは、インドからバングラデシュに至る家畜交易の流通経路が州ごとに違いがあるのか、ネパールとインドの間の流通経路だけである。

今後の研究の推進方策

今後の研究は、以下の点に注目しておこなう。1.インド・バングラデシュ国境における家畜交易の地域差。インドの州によって、家畜(特に牛の輸出)について、州の違いによって状況が異なるのか、西ベンガル州のコルカタからベナポールへのルート、メガラヤ州のシーロンからシレットに至るルート、トリプラ州のアガルタラからクミッラに至るルート、ミゾラム州のアイザワルからチッタゴンに至るルートなどの家畜交易の状況をインド側、もしくはバングラデシュ側で調べる。2.ネパール側からインド側への流通経路をネパール側のイラム、ビルタモル、ビラトナガルで調査する。3.インド・バングラデシュ国境における牛の輸出入の制限に関する新聞記事をアジア経済研究所で探す。コロナウィルスの影響で海外渡航できない場合、3を中心に行い、渡航制限が解除され次第、すみやかに調査をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルスによる影響で、2020年2月から3月に予定していた調査をおこなうことができなかった。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Solidarity economy versus neoliberalism?: Microcredit in rural Bangladesh.2019

    • 著者名/発表者名
      Sugie, Ai
    • 雑誌名

      Journal of Business and Economics

      巻: 10・9 ページ: 811-824

    • DOI

      10.15341/jbe(2155-7950)/09.10.2019/002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 伝統野菜をどう支えるか2019

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 雑誌名

      ビオストーリー

      巻: 32 ページ: 4(44-47)

  • [学会発表] 宗教的祭礼と家畜交易:バングラデシュ・インド国境における牛交易の事例2020

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      日本地理学会(コロナウィルスの影響で中止)
  • [学会発表] ムスリムの被差別集団を何と呼ぶか?-バングラデシュ農村における楽師集団の事例から2020

    • 著者名/発表者名
      杉江あい
    • 学会等名
      東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・共同利用・共同研究課題「南アジアにおけるムスリム社会の民族誌的研究」研究会
  • [学会発表] インド・バングラデッシュ国境における「セミ・リーガル」な家畜交易ヒマラヤの家畜回廊に関わる調査32019

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      生き物文化誌学会
  • [学会発表] 2つの羊毛敷物:チベット絨毯とネパールのラリの生産と流通2019

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      日本南アジア学会公開講座:シンポジウム「インド・ファッションの世界:素材から考える装い」、2019年7月13日(土)、国際ファッション専門職大学名古屋校舎/ 名古屋モード学園
    • 招待講演
  • [学会発表] 動物を神に捧げ、共食する:南アジアの祭礼と諸宗教間での肉食観の違い2019

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      生き物文化誌学会東京例会シンポジウム「命を見る目線」
    • 招待講演
  • [学会発表] Changes and Persistence of Women’s Roles in Rural Bangladesh2019

    • 著者名/発表者名
      Sugie, A. and Khan, S.
    • 学会等名
      第71回人口学会
    • 招待講演
  • [学会発表] バングラデシュロヒンギャ難民キャンプ地帯における水源とその利用2019

    • 著者名/発表者名
      杉江あい,海津正倫
    • 学会等名
      日本地理学会
  • [学会発表] 地理学における難民へのアプローチ―ロヒンギャ難民の事例をもとに2019

    • 著者名/発表者名
      杉江あい
    • 学会等名
      第3回移動と共生研究会
  • [図書] 「フィールドにおける安全対策とその限界―バングラデシュ調査体験より」柿澤教伸・野中健一・椎野若菜編『フィールドワークの安全対策』2020

    • 著者名/発表者名
      杉江あい
    • 総ページ数
      10(128-137)
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      978-4772271301
  • [図書] 「ヒマーラヤ地域:聖山への眼差しの歴史から考える」石坂晋哉・宇根義巳・舟橋健太(編)『ようこそ南アジア世界へ』2020

    • 著者名/発表者名
      橘健一
    • 総ページ数
      7(240-246)
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      9784812219188
  • [図書] 「難民キャンプに暮らすロヒンギャ」日下部尚徳・石川和雄編著『難民キャンプに暮らすロヒンギャ』2019

    • 著者名/発表者名
      杉江あい
    • 総ページ数
      15(64-78)
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      978-4750348698

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公開日: 2021-01-27  

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