研究課題/領域番号 |
18K01160
|
研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
|
研究分担者 |
橘 健一 立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)
杉江 あい 名古屋大学, 高等研究院(環境学), 特任助教 (10786023)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 交易 / 祭礼 / ヒンドゥー教 / イスラーム教 / 牛 / 山羊 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は南アジアにおける祭礼に伴う家畜交易を明らかにすることが目的である。特に、①ヒンドゥー教の大祭のために、仏教徒の多いチベットからネパールにもたらされる山羊の交易、②イスラーム教の犠牲祭のために、ネパールからインドを経由してバングラデシュに至る家畜交易を調査するものである。 2020年2月までにチベット・ネパール国境の調査と、インド西ベンガル州とバングラデシュ国境を越える家畜交易の現状を調査することができた。また、2020年3月にはネパールからインド・西ベンガル州に至る国境交易についても、ネパール側のイラム郡やジャパ郡を訪れて、牛のインド側への送り出し事情を調査する予定であった。 このため、2020年度は、それまでの成果を踏まえ、インド北東州(メガラヤ州、トリプラ州、ミゾラム州、連合州など)とバングラデシュ国境、ネパール・インド国境の家畜交易を調査する予定であった。インドの情勢次第ではこれらの州のすべてには入れないこともあるが、バングラデシュ側から交易の現状を調査することが必要である。 しかし、2020年3月以降、新型コロナウィルスの流行で、インド、ネパール、バングラデシュともに海外調査が行えない状況になった。そこで、2020年度はこれまでの調査でわかった成果を論文にすることをおこなってきた。その結果、ビオストーリに投稿した論文「動物を神に捧げ、共食する:南アジアの祭礼と諸宗教間での肉食観の違い」を刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの流行で調査するはずであった2020年度の課題がおこなわれていないからである。ネパールからバングラデシュに至る家畜交易の全体像を明らかにするためにはこの点に関する調査が不可欠である。というのも、インドでは、近年、ヒンドゥーナショナリズムを標榜するモディ政権の誕生により、牛肉の生産を目的とする牛の屠殺や宗教的な祭礼で供犠に用いるために牛をバングラデシュに送ることに対する反感が高まっている。ただ、2019年までの調査で牛の屠殺や牛肉食についての規制はインドでは州ごとに異なっており、バングラデシュと隣接する西ベンガル州に関する限り、州政府の許可を得たイスラーム教徒などがおこなうことは可能であることが2019年度の調査でわかっている。これまで調査した西ベンガル州と比較する上で、昨年度おこなうはずだったバングラデシュと国境を接するインド北東州でも、牛の交易をめぐる現状がどうなっているのかを知ることが、不可欠である。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は最終年度であるが、新型コロナウィルスの流行が一段落し、海外渡航が可能になったら、2020年度に調査することができなかったインド北東州とバングラデシュ国境、ネパール・インド国境の家畜交易を調査する予定である。もし、本年度も新型コロナウィルスの流行で海外調査が行えない状況になった場合は、研究を1年延長することを考えている。目処としては、夏休みまでに調査にいけるかどうかで延長を判断したいと考えている。 また、これまでの調査で明らかになったバングラデシュ・西ベンガル州間の国境交易の状況については、本年度中に研究成果をまとめておく必要がある。さらにインド・バングラデシュ国境の間の牛交易の状況に関しては、新聞記事を用いて情勢を確認しておく。インドやバングラデシュの新聞はアジア経済研究所にあるので、長期休暇に首都圏への出張が解禁されたら、訪れて関係する記事を収集してくる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行で海外調査がおこなえなかったため。
|