研究課題/領域番号 |
18K01162
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 民族対立 / 文化進化論 / 文化係留型ゲーム / ジレンマ / 牧畜社会 / 東アフリカ |
研究実績の概要 |
令和5年度は、エチオピア国において現地調査を予定していたが、渡航直前に罹患し現地調査を中止せざるを得なかったことから、研究計画にも大きな遅延が生じた。 その中でも、国内で行える調査として、以下の3点を行った。 (1)エチオピア国における政治経済・環境状況に関する情報収集を、BBC, CNN, Al Jazeeraの報道をもとに行った。政治に関しては、令和2年よりエチオピア北部は内戦状態にあったが、これと呼応してエチオピア南部からオロモ開放戦線OLFが進軍するなど、政府軍との武力衝突や民間人の殺害が起きている。これらに加え、令和5年には身代金目当ての誘拐も頻発しており、11月に行われた政府とOLFとの和平交渉が失敗に終わってからは、OLFによる攻撃が急増している。こうした紛争について網羅的にデータを収集した。 経済については、令和5年12月にエチオピアは債務不履行に陥り、国内通貨の下落が進んでいる。環境面では、令和5年10-12月にはエチオピア東部で洪水による被害が起きたほか、エチオピア北部では令和5年11月に内戦が終結したものの国土の荒廃による飢饉が起きている。 食料や燃料の価格も上昇しており、これらの状況はすべて新たなる紛争の原因となりうることから、網羅的にデータを収集した。 (2)ボラナ県周辺における、ローカルな民族紛争や殺人などの記録収集を継続した。これは現地の調査協力者2名によって実施され、電話によって定期的に収集状況の確認をおこなったが、情報の集計まではできなかった。 (3)引き続き、文献を用いて文化進化論への理解を深めた。また、現地の状況に合致するように公共財ゲームを改良する可能性を検討した。しかし、緊迫する政治・経済・環境の状況を考えると、他民族への非寛容な態度と自民族への利他性が高まることが予想され、公共財ゲームの結果に強いバイアスがかかることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要に記したように、現地調査を実施することができなかった。いくつかの点で研究を進めたが、現地調査を中心とした研究計画を立てていたことから、遅れていると判断した。 また、政治的対立の激化や、経済的・環境面での疲弊が生じており、これらが原因となって公共財ゲームの結果に大きなバイアスがかかることが予想されたほか、調査地において小規模な紛争が頻発していることから、研究計画のこの部分については達成できない見込みが強くなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究については調査期間を更に1年延長し、令和6年度に現地調査を実施する。ただし、当初予定していた調査地では小規模な紛争が頻発していることから、現地の調査協力者をエチオピア国の安全な地域に招くことで、ボラナ県周辺におけるローカルな民族紛争や殺人の記録を回収する。一方、公共財ゲームについては、調査地の治安が悪く、実施は難しい。この点については、インフォーマントへのインタビュー等によって大体のデータを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)が生じた状況として、もともと本研究課題は現地調査を中心に予算執行を予定していたが、令和2年から4年にかけて新型コロナ感染症の世界的流行および現地の治安状況の悪化などが原因で、現地調査を実施できなかったことによる。本研究課題は令和4年度が最終年度であったが、調査期間を1年延長して、令和5年度に現地調査を実施する計画を立てた。しかし、代表者の罹患により実施できなかった。そこで再度、調査期間を1年延長することで予算を執行する。また調査地の治安状況が悪いことから、その周辺地域で調査を実施する予定であるが、安全を確保するためレンタカーを借り上げることとしている。
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