研究課題/領域番号 |
18K01166
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大坪 玲子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (20509286)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イエメン / 移民 / 嗜好品 / カート / 違法薬物 / ムスリム |
研究実績の概要 |
令和元年度はドイツでイエメン人に対する聞き取り調査を行い、あわせて文献資料やインターネットでの情報を収集した。本研究で注目するカートはイエメンや東アフリカ諸国では嗜好品として扱われるが、ヨーロッパでは違法薬物認定が進んでいる。昨年度調査を行ったオランダとイギリスはそれぞれ2012年、2014年にカートは違法薬物に認定されたが、ドイツでは1998年と比較的早い時期に認定された。とはいえ隣国からの密輸品は入手できることは先の2ヶ国と同様である。ヨーロッパに住むイエメン人は、ソマリア系難民・移民や、イエメン国内のイエメン人と異なり、どちらかというと少人数で集まる傾向がみられる。これがイエメン人の特徴である結論するのは短絡的であるが、これまでのヨーロッパにおけるカート研究のインフォーマントがソマリア系難民・移民だったのは、イエメン人が実際に「見えない」ことにも関係すると思われる。ただしイエメン人が外国で故郷の嗜好品を熱望しているというわけではない。イエメンとヨーロッパでは生活習慣が異なり、そのことがカートのない生活を受け入れている要因ともいえる。カートの代替となる嗜好品としてアルコール飲料が考えらえるが、カートほど公言しない傾向にある。現在イエメンは内戦状態にあるが、故郷とのつながる方法に関しても、新たな情報を得た。 国際的な学会への参加としては、IUAES(the International Union of Anthropological and Ethnological Sciences) Commission on the Middle East(ポーランド)で、“Changing Meanings of Qat Consumption inside and outside Yemen”を口頭で発表し、研究成果を問うた。 日本文化人類学会課題研究懇談会「嗜好品の文化人類学」の研究会を実施し、第54回研究大会の分科会「嗜好品から見る社会:パン・マサラ、シーシャ、リッブ、カートの事例から」を主宰した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フランスでの現地調査は年度末に実施するつもりだったが、新型コロナウィルスの影響で実施を見合わせた。ドイツではフランクフルト、ケルン、ベルリンでイエメン人への聞き取り調査を予定通りに進めることができた。資料収集および分析は順調に進んでいる。IUAES Commission on the Middle Eastでは関係する研究者と今後の研究につながる意見交換ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き現地調査を行い、これまでの調査と資料のデータを整理し、カートを発端とする「文化摩擦」が移民社会に何をもたらしたのかということを明らかにする。現地調査はアラブ首長国連邦とフランスで行いたいが、新型コロナウィルスの影響でどこまで可能であるか、現時点では予測できない。これまでの研究成果を国内外の大学・研究機関で発表し、論文や一般書を通して社会に還元する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度にドイツ、フランスで行う予定の現地調査をドイツのみ実施したため。次年度に調査を実施する予定である。
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