研究課題/領域番号 |
18K01166
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
大坪 玲子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20509286)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イエメン / 移民 / 嗜好品 / カート / 違法薬物 / ムスリム |
研究実績の概要 |
本研究は初年度はイギリスとオランダで、次年度はドイツで現地調査を行い、薬物としてのカートと他の嗜好品のあり方について調査した。ヨーロッパにおけるカート研究はソマリア系難民・移民を中心に進められてきたため、イエメン系移民の実態が解明されてこなかったが、イエメン系移民はヨーロッパにおいて違法薬物であるカートを熱望しない傾向にあるが、それは単に違法だからという理由だけでなく、イエメンとヨーロッパでは生活習慣が異なることがカートのない生活を受け入れている原因であることが明らかになった。カートの代替となる嗜好品としてアルコール飲料が考えらえるが、アルコール飲料は合法であるにもかかわらず、カートほど公言しない傾向にある。以上の特徴を踏まえ、今年度はヨーロッパではなく、アラブ諸国であるアラブ首長国連邦におけるイエメン系移民と嗜好品の調査を予定していたが、新型コロナウィルスの影響で調査を断念した。このため2021年度まで研究期間を延長することにした。調査は進まなかったが、インターネットを使用して情報を収集し、これまでの成果をまとめる時間が取れたことは有益だった。国立民族学博物館現代中東地域研究拠点との共催で2月にシンポジウム「境界を楽しむ:中東・イスラーム世界の嗜好品」を企画・実行した。オンライン開催となったため、広く社会に研究成果を還元できる機会となった。出版に関してはSur la notion de culture populaire au Moyen-Orient 及び『アラビア半島の歴史・文化・社会』において英語で論文を2本刊行した。学術論集の編集と『季刊民族学』の特集を企画し、どちらも2022年に刊行される予定である。また小田淳一氏との共同研究「カート・オントロジー構築の試み」は日本人工知能学会2020年度研究会優秀賞に選ばれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、本研究の最終年度に当たり、アラブ首長国連邦においてイエメン系移民と嗜好品の調査をする予定だったが、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大で実施できなかったため研究は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響がいつまで続くのか判断が難しい状況ではあるが、アラブ首長国連邦での調査の準備を進め、これまでの調査と資料のデータを整理し、カートを発端とする「文化摩擦」が移民社会に何をもたらしたのかということを明らかにする。今後の軌道修正として、まず日本に滞在するイエメン系移民への聞き取り調査を進め、「文化摩擦」のない日本における状況も考察対象とする。またイエメンは内戦が続いているために調査が困難であるが、インターネットを利用すれば、他の地域との情報差も少なくなるので、内戦や新型コロナウィルスの影響によるイエメン国内での嫌カートの動きや、西洋風カフェの設置、eコマースの展開にも目を配る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で現地調査が実施不可能になった。次年度の調査費に充てる予定である。
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