最終年度に実施した研究の成果は、本研究期間において実施したカメルーン共和国における調査内容の検討、ならびに映像資料を整理・編集したことである。また、「狩猟採集社会における「嫉妬」の語り―カメルーン共和国Bakaの民話―」という題目で論文の執筆に取り組んだ。 研究実施計画においては、令和元年度に実施した調査に基づき、令和2年度に再び調査を実施する予定であった。しかし、令和2年度、令和3年度と新型コロナウイルス感染症の影響により調査を実施することができなかった。そのため、対象社会において民話の映像を活用する効果については確かめることができなかった。この点は、今後の研究において十全に取り組む。 本研究の成果として、既に収集・出版されている民話集が、当該民族の役には立っていないことが確認できた。読み書きに通じている研究協力者であっても文字化されている民話を自然に読み聞かせるようなことはできなかった。対して、本研究において撮影・録音した民話に対する当該民族の人々の関心の高さについては、現地において確かめることができた。さらには、そもそも民話は当該民族が森でキャンプ生活する際に、夜間の娯楽として語られてきたものであり、森でキャンプ生活をする機会が減っている現在、若者たちは民話を聞く機会を失っていることも明らかになった。これらの状況を踏まえると、文字のない社会において語り継がれている民話を保存・活用するためには映像による記録が不可欠である。今後も本研究において制作した民話の映像を活用して、さらに研究を進める所存である。
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