研究課題/領域番号 |
18K01171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平野 美佐 (野元美佐) 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (40402383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貨幣 / 交換 / 沖縄 / 宮古島 / 祝儀 / 贈与 |
研究実績の概要 |
今年度も引き続き、宮古島を中心に現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、予定していたようにはできなかった。感染が収まった3月に、感染拡大に留意して9日間の調査を行った。具体的には、子どもの祝儀やその返礼に関する聞き取りと参与観察であった。また、宮古島市と那覇市の図書館において、関連文献の調査を行った。加えて、コロナ禍での祝い、祭り、日常生活(模合等)の変化についても聞き取りをした。本科研課題の調査対象としている日常、あるいは非日常における交換活動は、すべて密な状況で行われるものである。よって、さまざまな活動がコロナによって大きな影響を受けていることがわかった。コロナが早期に収束すれば元に戻る可能性はあるが、長引くとさまざまなやり方が変わってしまうかもしれない。2020年度は、文献調査と聞き撮りデータの分析により、子どもの祝儀などで行われる貨幣と商品券の交換について研究を進めた。この成果は2021年の文化人類学会の第55回研究大会で発表を行う予定にしている。2020年度に行った(発行された)研究成果の報告は、下記のとおりである。 ①沖縄と大阪市大正区の模合について、「沖縄から大阪へ―大正区に息づく庶民金融」というタイトルで執筆した(『大阪春秋』181号)。 ②2021年1月29日、宝塚市の「兵庫県阪神シニアカレッジ」の講師として、「カメルーンと沖縄の比較研究:トンチンと頼母子講」というタイトルで講義を行った。 ③関西学院大学商学部の「マーケティング特論」の授業(10月より半期)のなかで、宮古島の貨幣の贈与と交換について、学生向けに講義を行った。 ④宮古島の離島にある池間島在住作家の伊良波盛男氏の民俗学的小説『神歌が聴こえる』の書評を執筆した(『コールサック』2020年12月104号)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、コロナ禍により現地調査がほとんどできなかった。2020年度も調査を予定していたミャークヅツという祭りは、規模を大きく縮小して行われた。飲食を伴う模合の集会も、停止または集まらずに行われるなどしている。また、子どもの祝いをはじめ、個人の家庭で多くの人をもてなす宴は自粛、規模縮小となっている。このように、現地での参与観察が難しくはなってしまったが、現地に行ける機会を見つけ、過去についての聞き取り等でデータを補い、研究を進展させたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在コロナ禍のため、本件の課題である交換の現場が、ことごとく調査困難となっている。そのため、今後は参与観察が難しい場合は、聞き取りや資料調査にウェートを置き、研究を進めていきたいと考えている。高齢の方への聞き取りについてはPCR検査をしていくなど十分な配慮をしながら、過去の贈与と交換について、現地での聞き取りを進めたい。 また、コロナ禍でどのように人びとがこれまでの慣習や行事を維持していくのかについても、新しい課題として追っていきたい。そこには、本科研の研究課題である、沖縄県・宮古島の文化のレジリエンスがみられると考えるからである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で予定通りの現地調査がかなわかなかったため、次年度使用が生じた。 今年度は、コロナの状況がおさまり次第、なるべく現地で調査を行いたい。
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