研究課題/領域番号 |
18K01171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平野 美佐 (野元美佐) 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (40402383)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 貨幣 / 交換 / 沖縄 / 宮古島 / 祝儀 / 贈与 |
研究実績の概要 |
今年度も新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、予定していたように宮古島や沖縄本島での現地調査ができなかった。さらにコロナ禍の影響で、研究対象である模合(頼母子講・無尽)や祝儀は、中断、規模の縮小がされていたため、参与観察は難しかった。よって、関連文献・資料の精読・分析を行い、これまでのデータをまとめながら発表や論文、講演や授業をするなかで考察を深めた。 宮古島の模合や祝儀の事例を、カメルーンの事例と比較することで、文化的背景が異なっていてもどちらの社会においても貨幣がコミュニティの形成を促進していることを英語論文として執筆した。また研究会や学会での発表を通じて、祝儀における商品交換と贈与交換のコンバージョンの在り様について、考察を深めることができた。具体的には、宮古島の子どもの祝いなどにおける貨幣という祝儀と、スーパーの商品券など金券の返礼をやりとりすることにより、互いに日常生活のなかで過剰な負担なく頻繁な祝儀を行なうことが可能になっていることを確認した。また、お返しに受け取った金券は、さらに自分の親族などに贈与されることなどがわかった。宮古島の祝儀はスーパーなどで食品、飲料などの商品を購入することで成り立ち、またスーパーの商品券が客に手渡されるという商品交換を支えている贈与交換でもある。このことを引き続き考えていきたい。 宮古島での祝儀や模合は対面で飲食をともなう行為であるため、コロナの影響が長引くことでどのように変化していくのか、今後の推移に注目をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き新型コロナウイルス感染拡大がおさまらず、とくに感染が拡大していた沖縄県には、現地調査に行くこと自体が難しかった。また、研究対象としているミャークヅツという祭りをはじめ、多くの祝儀が規模を縮小したり、休止したりしている。飲食を伴う模合の集会も、停止しているグループが多かった。このように、研究対象の参与観察が難しい1年となったが、文献調査や聞き取り調査が進展したため、「遅れている」ではなく「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍のため、今年も参与観察はどこまでできるかわからない。よって、昨年度と同様、参与観察が難しい場合には、聞き取りや資料調査を進めることで、研究を進めていきたい。コロナ禍でも、みな模合やイベントなどを完全になくすのではなく、休止したり、おカネだけを受け渡すなどをしながら、コロナ後の再開を意図していることがわかった。コロナ禍の状態も貴重なデータと考え、そのような状況についても分析していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までは現地調査がままならないため、次年度使用額が生じた。 今年度は、現地調査に多く行く予定であり、旅費などで使用する予定である。もし旅費としての使用が難しい場合には、書籍など文献を購入する予定である。
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