研究課題/領域番号 |
18K01177
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
野口 久美子 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (00609571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インディアン史 / カジノ産業 / 部族自治 / カリフォルニア / アメリカ合衆国 |
研究実績の概要 |
本年度は、カジノ関連の基礎文献、統計資料の収集に加え、2019年3月には、2週間にわたり現地調査を行い、先住民カジノ産業が部族社会に与えた影響とカジノ産業に関する先住民社会の反応について明らかにした。具体的には、先住民カジノ産業の創設期から同産業の拠点となっているカリフォルニア州においてカジノ産業で大きな収益を上げる諸部族(カバゾン部族、ペチャンガ部族、アグア・カリエンテ部族、モロンゴ部族、トュールリヴァー部族、サンタ・ローザ部族)で資料調査、アンケート調査と聞き取り調査を行った。インタビューでは、特に、部族議会議員、長老者、スピリチュアル・リーダー、学生、女性を含めた部族成員を対象とし、カジノ産業での収益が保留地における教育、衛生・医療、雇用状況、生活環境全般に与えた影響、さらには、同産業が開始された以後の部族議会の運営方法、保留地内自治、部族アイデンティティの変容過程とその背景、カジノ産業に対する世代間、地域間の評価の差異などについて、部族政府、インディアン保健局部族支局、部族教育施設、部族言語センター、部族博物館、部族商業施設<コンビニ、ガソリンスタンドなど>、各家庭においてデータを収集した。
また9月にはアメリカ史学会年次大会、4月、7月、12月にはアメリカ史学会例会、11月、1月には関西アメリカ史研究会例会に参加し、アメリカ先住民研究、アメリカ外交史研究、アメリカ社会福祉史研究に従事するアメリカ史研究者らとの幅広い意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、学務との兼ね合いで当初2度を予定していた現地調査が1度しか行うことができなかった。そのため、2度目の現地調査の際に1度目の調査内容を組みあわえて合わせて行うと共に、帰国後、メールやスカイプ等を利用して現地調査を補完した。図書購入や学会参加については、概ね予定通りに進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、カジノ産業と先住民社会を巡る政治的力学とその変容過程を明らかにする。特に、近年の先住民カジノ産業の成功に伴い、自治権やカジノ産業の利権を巡って、部族政府と地域政府との軋轢は高まり、その多くのケースが連邦司法判決に調停を求めている。そこで、1980年代から現代に至るまでにこうした三者関係(部族、州、連邦)を根本的に規定してきた司法判をを巡る議論を事例として、カジノ産業をめぐる連邦制、州権、部族主権とその関係、そこに生じる軋轢やポリティクス、さらには、州、連邦に対する現代の先住民パワーの諸相を考察する。本調査には、一次史料として裁判資料や関連する州、カウンティ、部族レベルでの調査資料、カリフォルニア州の先住民カジノ監視団体であるStand up for California が提供する情報、全米インディアン・カジノ協会やカリフォルニア州インディアン・カジノ協会が提供する資料を用いる。加えて、州、カウンティのインディアン・カジノ政策担当者へのインタビューを適宜行う。以上の調査と分析により、最終的には部族、州(自治体)、国家といったアクターの立体的な相関関係の実態を明らかにする。そのため、9月と3月にそれぞれ3週間程度、ワシントンDCとカリフォルニア州において史料調査と聞き取り調査を行う。また5月に関西アメリカ史研究会で研究報告を行う。また本研究期間の最終年度に予定している研究成果の刊行(図書出版)の準備として、研究成果を論文としてJapanese American Studiesに投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度3月に実施した海外調査に使用した額は、次年度使用額として2019年度に記載する。
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