研究課題
基盤研究(C)
いわゆる「上野神話」のうち、地域(上野国)の始原と統治の由来をめぐるいくつかの物語に目をつけ、政治的正当性やアイデンティティとの関係を研究した。本研究期間では特に、古代豪族との系譜的連続性を主張してきた上野国一宮大宮司小幡家の中世末期から近代初期までの家伝文書群を調査し、それぞれの時代において、神話の言説が宗教者の祭祀権をどのようにして正当化し、そしてまた地域的アイデンティティを形づくったかを明らかにした。
民俗学
いわゆる「上州の語り物」(上野神話)に関わるものとして学界から注目されてきた、群馬県地域の地方色豊かな宗教的文書や歴史記録類を調査研究し、学術的価値の高い貴重な資料を写真撮影、デジタルデータ化することができた。特に、初公開の文書を多く含む上野国一宮大宮司小幡家文書については、文書群全体を撮影し、研究可能なものにしたことの意義は大きい。さらに、当事者へのインタビュー調査などを通じて、「上州の語り物」の管理者と想定できる宗教的職能者集団の歴史や、近代化以降の動向を明らかにすることができた。