研究課題/領域番号 |
18K01180
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
鈴木 七美 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 教授 (80298744)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エイジング(エイジ)フレンドリー・コミュニティ / 超高齢社会 / ライフロングラーニング / コミュニティ教育 / 相互扶助 / 米国 / 多世代協働 / 平和主義 |
研究実績の概要 |
本研究は、超高齢社会において、多文化・多世代の交流に開かれた場で、人びとがどのような経験を紡ぎ意義を見いだしているのか、またそうした場はいかにして実現できるのかに関する情報を、現地調査にもとづき提示することを目的としている。今年度は、高齢者のケアや教育に関し、コミュニティがかかわる実践を重視してきたキリスト教の一教派である再洗礼派の人びとの暮らしについて、これまで行ってきた現地調査の内容を整理し、歴史的変動についての第一次・第二次資料を拡充したうえ、これらを詳細に分析し、成果として、書籍『アーミッシュキルトを訪ねて――照らし出される日々の居場所へ』を執筆した。 内容としては、再洗礼派の人びとがなぜコミュニティの力を不可欠のものとして重視するのかを、相互扶助、平和主義、教育のありかたに関するかれらの考え方と、それを実践につなげる方策について新たな知見を含めている。これらは宗教的信条にもとづくものだが、実践の過程で新たな局面を生み出してきた。教育は、次世代にこれまで人びとが検討してきた価値観を伝えるコミュニティに関する教育と、すべての世代がかかわる生き方をともに考えるコミュニティ教育として実践されてきた。また、平和主義の実践としての代替活動の開発とその展開は、多様な文化的背景を持つ人びとを包摂する居場所をもたらしてきた。こうしたことをともに考えるためにすべてのメンバーが語り合いの場に参加できる状態を保つために、相互扶助の姿勢は不可欠のものとなっている。こうした知見からは、再洗礼派のコミュニティ教育は、高齢者ケアあるいは高齢者の能力を生かすことや若者世代への文化伝達のために限定的に行われるのではなく、コミュニティについて考えるすべての人にとって不可欠のライフロングラーニングと捉えられ実践され続けてきたことが明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染拡大という状況下、これまで蓄積してきた現地調査資料についてさらに内容を深める目的で、歴史的変動に関する第一次資料および第二次資料の探索を行い、多くの新たな資料を発掘し収集した。これらの分析と考察を充実させるために、より多くの時間を要するとみられる。
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今後の研究の推進方策 |
米国のコミュニティ教育に関して、参加型の実践的研究により収集した資料に加えて、歴史的変動に関する第一次資料および第二次資料の収集を進め、これらを整理し分析を進める。 認知症高齢者を含む高齢者や子どもたちなどすべての人が必要不可欠なメンバーとして参加するコミュニティ教育にかかわる価値観と、実践のありかたについて、現地調査による情報および第一次・第二次資料の分析を進め考察を深める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大状況下ではあったが、電子ジャーナルを含む文献等からの情報収集を充実させた。英語およびドイツ語による情報収集と発信を続けるために、必要な原稿の英文校閲を進め、新たに知見が得られた領域に関しては、さらに研究を深化させるために、人びとの価値観にかかわる一次資料の収集を精力的に行った。このように蓄積した資料にもとづき、2022年度においても分析を深め成果発信を進める。
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