研究課題/領域番号 |
18K01181
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
川瀬 慈 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 准教授 (30633854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アフリカ / エチオピア / 無形文化 / 音楽職能 / 映像人類学 / 民族誌映画 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、新型コロナウィルスの世界的な蔓延の影響で当初予定していた海外における調査を行うことができなかった。しかしながら、本研究課題に関連する複数の著作を執筆し、発表することができた。代表的な刊行物としては単著『エチオピア高原の吟遊詩人 うたに生きる者たち』(音楽之友社)が挙げられる。本書では、エチオピア北部の地域社会において音楽・芸能を生業とする職能集団アズマリ、ラリベラの活動の歴史的変遷、地域社会の様々な場面における活動の様子、および当集団を対象にした報告者自身による映像記録をめぐる創意工夫、さらに完成した作品が各国で巻き起こした議論について報告した。本書の後半部にはQRコードを付し、報告者が制作した4本の民族誌映画作品(本書で扱った職能集団のエチオピア北部地域社会における活動を記録した作品)と書籍を連動させる試みを行った。 大阪の映画館シアターセブンにおいて9月に開催された東京ドキュメンタリー映画祭in大阪においては、アフリカ無形文化をテーマに報告者が制作した3本の民族誌映画を発表した。また、研究集会The Image Making from Africa-Perspectives from Visual Anthropology-を主宰者として企画し、東京外国語大学や日本アフリカ学会の協力のもと、6月と3月にオンラインで開催した。本会では、マリ、カメルーン、エチオピアの映像人類学者、映像作家とともに彼ら/彼女たちが制作した研究映像を視聴し「人類学的な映像記録とは何か?」について密な議論を行った。報告者はさらに、12月に開催された文化遺産国際協力コンソーシアムにて「アフリカ無形文化の記録をめぐる課題」について報告し、アフリカで長年調査を行う人類学者やJICA関係者等と報告者の研究課題に関する意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は本来、、国際的な文化遺産保護をめぐる世論や、学術的な議論の動向を踏まえながら、 アフリカの無形文化保護を推進する国際機関、行政機関において映像データの管理、分類に関する調査を実施し、関連資料(計画書や報告書)の収集を行うことを計画していた。しかしながら新型コロナウィルスの世界的な蔓延のため、当初の予定通りの調査を行うことがかなわなかった。しかしそのような状況の中、zoomを活用し、各国の学者や、行政関係者と公式、非公式のオンライン会合を開き、文化遺産保護や、民族誌映画の方法論に関わる意見交換をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当面は新型コロナウィルスの世界的な蔓延について、引き続き慎重に状況を注視しつつ、zoomを活用しながら、各国の研究者や、国際機関、行政等の関係者との公式、非公式の会合を継続する。また、報告者が過去に制作したアフリカ無形文化に関わる民族誌映画の公開並びに視聴者との議論を企画し実行する。以上の活動を通して研究課題に関わる議論を学界内外の関係者と行い、必要な情報を収集していきたい。同時に昨年度同様、研究課題に関連した成果出版の執筆にも励む所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的な蔓延のため、当初予定していた海外での調査計画の変更を余儀なくされたため。
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