令和5年度は、6月に1週間の現地調査を実施し、相思社資料室、水俣市立水俣病資料館、国立水俣病情報センター、水俣病を語り継ぐ会、熊本県水俣病保健課などで、水俣における「負の遺産」の生成過程に関する資料調査をおこない、令和4年度までに蓄積した歴史的データを補足した。また、これまでの成果をまとめて執筆中だった論文の内容について、主情報提供者になっていただいた元・現水俣病センター相思社職員に事実確認をしてもらうとともに、改稿に向けての有益なコメントをいただいた。この論文は、本研究プロジェクトの成果の一部として、「考証館活動の成功の社会的条件――1990年代の水俣病運動界と相思社」『国立民族学博物館研究報告』48巻2号として3月に発表した。くわえて、今年度に水俣病を語り継ぐ会が立ち上げた、水俣病に関する写真資料を負の遺産として保存することを目的とした、「水俣・写真家の眼」プロジェクトについて、活動の進捗状況と今後の活動計画に関する情報収集をおこなった。 さらに、本研究プロジェクトの成果の一部として、国立民族学博物館において、企画展「水俣病を伝える」(2024年3月14日~6月18日)を開催し、一般社会に向けて展示を通した成果発信をおこなった。本展は、新聞各紙で論評され、フィールドワークの成果を展示に活かしたものとして高く評価されている。さらに、3月16日には、主な調査対象としている水俣病センター相思社の永野三智常務理事を招へいし、国立民族学博物館講堂において、「水俣病を伝える」と題する公開講演会を実施した。
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