本研究は、社会的制度としての「負の遺産」が、特定の歴史的文脈において、いかにして発展してきたかを明らかにした点で学術的意義が高い。その際、「負の遺産」の社会的役割を理解するために、個人や博物館、NPO、行政による、遺産を定義する多様な実践が競合し、相互作用する過程を分析の対象にするという独創的なアプローチを提示した。また、研究成果の一部は、国立民族学博物館の企画展「水俣病を伝える」及びその関連事業を通じて社会・国民に広く発信し、差別や偏見の解消や、「負の遺産」の保存に対する市民の理解促進につながる実践的な成果をもたらした。
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