研究課題/領域番号 |
18K01183
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
甲地 利恵 北海道博物館, アイヌ民族文化研究センター, 研究員 (20761638)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アイヌ音楽 / 北方諸民族 / 芸能 / 映像資料 / 音声資料 / 採録 |
研究実績の概要 |
研究目的と当初計画にしたがって大きく3つの領域を立てて研究を実施した。 (1)アイヌの歌の旋律構造の分析について : 資料の情報を収集していく中で、現在絶版となっているアナログレコード盤資料のひとつで、1950年代に白老町の伝承者らから採録した音源の所在がわかったことから、版元であるレコード会社と協議し、複製(デジタル)で購入した。また別の用務で6月に白老町を訪れた際に、当該の資料での演唱者について断片的ではあるが情報を得た。 (2)アイヌ音楽及び関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集について : 10月に平取町で開催された「日本映像民俗学の会第41回大会「アイヌと北方文化 映像フィルムと知の再編」」に参加し、アイヌ文化及び関連する北方諸民族の文化を記録した各種の映像をまとめて鑑賞し、記録内容を確認した。また、同会の有識者より、アナログ形式で記録された映像のデジタル化について助言を得る等の機会とできた。 (3)北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在(国内)調査について : 民族音楽学者の故・谷本一之氏が1970~2000年代に採録した研究資料は、現在、国立民族学博物館において、その利活用に向けての準備が進められつつあることから、12月に同館を訪問した。その際、担当の齊藤玲子氏より、当該資料整理の現況と問題点等について説明を受けた。また、谷本氏による採録資料の整理作業を効率的に進めるうえで同氏の調査履歴と個々の資料との関連づけが不可欠であり、甲地による情報提供が有効であることから、同館での同資料の整理作業を、本研究と相互に協力しながら進めていくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関での年間業務との兼ね合いもあり、前記(1)(2)(3)を並行させて進めることが難しかった。 (1)については、所属機関での行事や内部報告会でこれまでの情報や音楽分析の方法再検討について整理しまとめることに時間を費やしたため、購入した資料をはじめとする新たな対象には着手できなかった。 (2)については既存資料のデジタル化を優先することにしたものの、その方法を模索する時間を要した。 (3)については、国立民族博物館の担当者と面談できる機会がなかなか折り合わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)アイヌの歌の旋律構造の分析 : 既存の音声資料の内容分析の一環として、「神謡」と呼ばれる語り物音楽の分析方法について、2018年に見直しを図っており、これを以前の結論と具体的に比較対象する作業を進める予定。
(2)アイヌ音楽及び関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集 : 2018年10月に参加した「日本映像民俗学の会第41回大会」で有識者より受けた助言により、映像メディアの劣化対策を優先すべきと判断したことから、研究計画や方策を少々変更する。具体的には、2019年度は、以前分担者として参画した科研費課題において採録したコリヤークほかの北方諸民族の芸能の映像(Hi8ビデオテープ)のデジタルデータ化を進める。
(3)北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在(国内)調査 : 国立民族学博物館が整理作業を進めつつある谷本一之採録資料について、同氏の調査歴と個々の資料のとの関連づけをはかり、相互に情報を共有することを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の採録資料のデジタル化を進めるに際し、当初は機材の購入と臨時職員の雇用により進めることを考えていたが、一方で、業者に委託して行う方法についても模索したものの、どちらの方法がよいかの見極めに手間取った。2019年度はこの点を早々に決断決定し、研究目的の遂行に必要な執行をはかる。 併せて、音楽分析作業や収集情報データの整理作業に必要なソフトウェアやプリンタ等、当初予定の機材選定に手間取った。2019年度の早期に購入する。 また、相手方のつごうにもよるが、昨年度中に2~3回実施する予定で1回しかできなかった国立民族学博物館(大阪府吹田市)への出張を今年度中に実施する予定。
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備考 |
・ミュージアムカレッジ「アイヌの子守歌・諸民族の子守歌」(H30年6月17日、北海道博物館) アイヌや北方諸民族等の子守歌をテーマとした一般向けの講座 ・報告「神謡の旋律構造」(H30年10月10日、北海道博物館館内定例研究報告会) 神謡と呼ばれるジャンルの口承文芸の旋律構造の分析方法について再考を試みた結果について報告
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