研究課題/領域番号 |
18K01185
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 善姫 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (30546627)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結婚移住女性 / 高齢化 / モビリティ / ケア |
研究実績の概要 |
80年代後半から広がった東北の男性とアジア出身の女性とのお見合い国際結婚は、当時農村地域における後継者不足の解決策の一つとして普及された側面が大きい。しかし、2000年に入ってからは、結婚移住女性の来日時の年齢も高くなっていく傾向が見られ、それは婚姻の目的が後継者を産むということより、高齢化する日本の家族のケアであるケースが増えたことを反証する。ところが、そういった結婚移住女性たちもいずれは年を取る。彼女たちは家庭内での日本人のケア労働を担った後、同じく日本社会でケアを受ける側になる。 ところが、日本の東北地方は従来のジェンダー規範と外国人政策の乏しさという複合的要因により、移住女性たちに対する多文化的ケアが十分確率されていない。そのため、加齢・高齢化の中の移住女性たちが年をとった後に本国に戻るというケースが多く見られる。 本研究では、国によって医療行為はもちろん病気に対する認識の違いなどがある中、移住女性たちの医療に対する信頼度、治療における文化的葛藤などを聞き取り調査し、多文化ケアの必要性を明らかにする。なお外国人集住地域における在日の高齢者施設での取り組みや諸移民国での移民高齢者に対するケアシステムを比較しながら、多文化的のケアシステムの在り方を提言することが本研究の目的である。 当該年度は、コロナ禍の中、海外や日本の他都市でのフィールド調査が制限されていた中、以前から関わっている産後うつ病を患っている結婚移住女性や高齢化に悩む移住女性への継続的な参与観察を主に宮城県内で行った。なお、当該年度中に国際共著論文を発表し、他にも研究の論文化に向けて主に資料中心の研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は、世界中のパンデミック状況下で国外での調査はもちろん、国外でのインタビュー調査も安易に行うことができない状況であった。特にパンデミック初期の状況では、移動制限や在宅勤務などと言った経験したことがない日常の状態の中、フィールドに基づく調査研究の継続に見通しが立てられない状況であった。特に本研究の対象者が加齢した移住女性であることで、デジタル調査は向いていない。それゆえ予定していた山形県での調査や、関西地域における在日高齢者施設での訪問調査も実施することができなかった。論文かに必要なデータを十分収集することができず、計画した研究の進捗が大幅に遅れることになった。
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今後の研究の推進方策 |
パンデミックの収束がいつになるか見通しが立たない中、研究方法を変更することを考えている。調査データに関しては、対面式のインタビューではなく、アンケート式に方法を変え、ネットと紙面両方で多言語のアンケート調査票を作成、量的調査を行うつもりである。量的調査に関しては、調査結果をネットに公開する。また最終年度であるので、これまで行った質的研究のインタビューや参与観察内容と照らし合わせながら、論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの状況が収まることを期待していたが、結局その状況が改善されることがない中、海外での調査活動はもちろん、国内移動も制限が続いた。そのため、調査研究のための旅費がそのまま残ってしまった。次年度は、調査方法を変更し、アンケート式調査をする。ネットと紙面でのアンケートを試み、回答率を高めるために妥当な範囲で回答謝礼を支給する予定である。また、ワクチン接種とともに感染拡大が収まったら、予定していた外国人集住地域での在日高齢者施設などでのヒアリング調査を行う。
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