予期しなかった新型コロナウィルスのパンデミック状態が続く中、約2年間フィールドワークの調査を中断せざるを得なかったが、22年度はパンデミックが落ち着くことによって、近距離の東北に住む結婚移住女性たちへの補足調査、及びアメリカシアトルの移民高齢者に関する聞き取り調査と韓国の結婚移住女性たちの現状を調査することができた。 研究調査では、東北に結婚移住した多くの外国人女性たちが加齢・高齢化と共に、身体的疾患はもちろん精神的疾患に悩んでいる実態があきらかになった。中には、日本の医療に対する不信感から、身体的疾患や精神的疾患がより深刻化したケースもあった。ヘルニアの治療をうけたN氏は、治療後に足指が怪死してしまった状態であるが、本人は原因を治療中に受けた注射のせいと考え、その後病院治療を中断している。また、統合失調症と判断されたA氏は、診断結果を受け入れることができず、日本の家族との関係も修復することができないままで夫による離婚訴訟で離婚判決を受けた。彼女を取り囲んでは、地域の自立支援センターなどの日本の公的支援は機能していたものの、何事にも本人が物事を決められない精神状態では次のケアステップに進むことができない。事例の結婚移住女性たちは、そもそも日本語力が足りない、または、日本の医療体系への知識や信頼が不十分、そして、日本に信頼できる後見人やサポーターがいないという共通点により、日本の医療やケアシステムにアクセスすることが難しいと言える。昨今、在留外国人の数が増えている日本において、今後外国人の加齢・高齢化に伴うケアシステムをどのように構築すべきかを議論する必要性が増していると思われる。 調査結果の一部については、2023年2月に発刊した拙著『東北の結婚移住女性たちの現状と日本の移民問題ー不可視化と他者化の狭間で』に書きしるし、公表した。
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