研究課題/領域番号 |
18K01186
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
吉野 晃 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60230786)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミエン / 歌謡 / 歌謡語 / 歌詞 / 女性シャマン |
研究実績の概要 |
2019年度は、タイ王国において8月5日~19 日(ナーン県ムアン郡ボー区,チエンラーイ県ムアン郡ホエイチョンプー区)、9月21日~28日(パヤオ県チエンカム郡ロムイェン区)のミエン村落で現地調査を行った。歌詞テクストの読解、歌詞テクストの収集、即興歌詞の録音、即興歌詞の読解、新宗教現象の儀礼記録と女性シャマンへの聴取等を行った。調査後、これらの調査で得られたデータを分析し、歌謡語語彙を採集した。詳細は以下の通りである。 1)ミエンの歌のテクストと歌謡語語彙に関する調査を、ナーン県ムアン郡のミエン村落において行い、歌謡テクスト「寄朋友的歌」の発音を確定し、インフォーマントの解説を得て意味を解読した。これらのプロセスを通じて歌謡語の語彙を収集し、その特徴を把握した。歌詞についても分析を行い、様々な歌の種類の歌詞の特徴を分析した。また、新しい歌謡テクストも採集(撮影)した。2)ミエンの新たな宗教現象については、陰暦七月の儀礼の調査をチエンラーイ県ムアン郡のミエン村落にある廟で行い、儀礼を録画録音した。また2019年陰暦正月以降、この廟の女性シャマン集団が分裂したので、その経緯についても聴取した。加えて新たな歌謡テクストも採集した。3)パヤオ県チエンカム郡の村落においては、既存のテクストとなっていない即興歌唱による歌謡を録音し、歌詞を書き出して、その内容をインフォーマントに質問して解読した。4)調査後には、1と3の歌謡語語彙に関する調査の成果を活用して、2で録音した女性シャマンの歌による託宣の内容の解読を進めた。5)歌謡語語彙に関して、ミエン語の辞書2冊における歌謡語彙をすべて抽出し、その全体を明らかにした。加えて、現地調査で得られたデータから、既存の辞書に載っていない歌謡語語彙を抽出した。6)中国のミエンの歌謡に関する研究文献を収集し、タイのミエンの歌謡との比較分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想以上に歌詞テクストの採集が進んだが、一方で新型コロナウィルスによる肺炎の蔓延のためタイおよびベトナムへの入国が制限され、1月以降に予定していた現地調査が行えなかった。その点でやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度においては、予定通りミエンの村で歌謡テクストの収集と解読に努める。文字で書かれた歌謡テクストを収集し、その発音を記録して、意味の解読作業を行う。この過程において歌謡語語彙を抽出してミエンの歌謡語のデータを蓄積する。即興の口頭の歌謡も録音記録して、テクスト化し、同様の分析を行う。更に過去に収録した儀礼の映像・音声資料を分析する。 この歌謡と歌謡語に関する調査と並行して、ミエンの新宗教現象の儀礼の調査もチエンラーイ県で行い、その歌謡による唱え言等を解読する。 ただし、新型コロナウィルスによる肺炎の感染が日本とタイ王国で収束するまでに時間がかかることが予想される。日本からタイへの入国制限が解除されないと現地調査を行えないため、年度内に現地調査が実現可能か危惧される。 現地調査が行えない場合、過去の調査において撮影した録画による歌謡の分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる肺炎の蔓延により、1月以降日本からのタイ入国に制限がかかり、現地調査を行えなかったため。 令和2年度には現地調査を増やしたい。可能であれば、以下のスケジュールで現調査を行うことを計画している。1)8月:タイで20日程度、10月:ベトナムで15日程度、12月:タイで20日程度、1~2月:タイで20日程度。現地調査においては、歌詞テクストの収集、インフォーマントの協力を得た歌詞の解読、即興歌謡の録音と解読、歌謡を応用した儀礼の観察録画を行う。さらに、現地調査で採集した録画録音データの分析も行う。 しかし、今年度内にコロナウィルス感染が収束しているか否か危惧され、収束していない場合は、タイ、ベトナムともに入国が不可能となり、現地調査が不可能となる事態も懸念される。
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