研究課題/領域番号 |
18K01187
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
大杉 高司 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10298747)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人類学 / エクアドル / ヤスニITT / 地球温暖化 / 排出権取引 / 贈与 |
研究実績の概要 |
本研究は、持続可能性の現況把握を目的とした経済、社会、自然環境の計量が、どのような活動を伴いながら特定の現実を彫琢していくのかを、アンデス地域の具体的事例にもとづいて解明することを目的としてきた。 2022年度についても、コロナ禍の継続により本研究の根幹となる当該地域における実地調査を実施することができず、中核となる研究を進展させることはできなかった。 一方、2018年に研究着手したエクアドル国のヤスニITT(ITT地域における原油を採掘しないことに対する代償要求の政治経済的枠組み)については、現地のマスメディアや推進派NGO、抵抗派団体、現地アカデミアにおける経済学および生態学分野の論争を、文献資料や電子資料を通じて継続的に追跡して情報と分析のアップデートに努めてきた。当初、ヤスニITTについては、より十全なかたちで研究結果を公表する予定であったものの、研究の大幅な遅れに鑑み、ひとまず暫定的な形で研究結果を公表すべく現有資料の整理と執筆にあたってきた。 また、より幅広い視野をもった比較研究では、ボリビアとコロンビアの同種の情勢を追うと同時に、グローバルに展開する「自然の権利」運動とそれを支えるネットワークの分析、さらに炭素排出権取引をめぐる環境経済学と生態経済学の対立構造、政治生態学と生態経済学の補完的でありながらも立場や見解を異にする点に着目し、ヤスニITTなど諸運動をよりマクロな展開に位置付けるべく研究にあたってきた。 他方ミクロには、同種の運動で頻繁に言及される先住民の自然観との相互翻訳過程に着目し、左派エコロジストが先住民の自然観を取り入れつつ何をどのように排除するのか、また先住民たちがグローバルに展開するエコロジー言語をどのように流用するのかについて分析を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
長引くコロナ禍により2020年度以来延期してきたアンデス地域での実地調査を実施することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については、アンデス地域における新型コロナウィルスの感染状況が落ち着きをみせており、エクアドルをはじめとする各国において現地調査を実施可能であることが十分に見込まれる。受け入れ態勢が整い次第、前回調査で十分に達成できなかった点、とくに自然科学者(生態学者、環境学者)との情報交換・研究連携、経済計画省、環境省などの公文書館での資料収集と調査にあたる。 くわえて、ヤスニITTをはじめとする諸運動について現時点での分析結果をまとめ、国内外の関連学会にてその成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は新型コロナ感染症感染拡大にともなう渡航制限により、本研究の中核をなし支出費目の大部分を占める、海外実地調査を実施することができなかった。そのため、2023年度への研究期間の延長および助成金の繰り越しが申請のうえ認められ、当該助成金が生じた。助成金は、エクアドルをはじめとするアンデス地域での実地調査、米国での学会発表出張費として使用することを計画している。実施時期は、受け入れ先の状況が流動的であるため現時点で確定できないものの、2023年7から2024年3月までのいずれかの時期、合計45日ほど想定している。
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