研究課題/領域番号 |
18K01188
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
中村 只吾 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (40636370)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 近世・近代移行期 / 漁村史 / 漁民 / 漁業 / 経験知 / 生業 / 生活 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本近世・近代を主な対象として、当該期の自然・社会環境に培われた漁民の経験知の実態および、それらと関連した漁村秩序の動態を解明することを目的としたものである。研究の展開に際しては、漁業および海域に関する経験知の分析および、漁民の生業・生活の多角性(ライフスタイル全般)の把握を活動の軸としている。これに沿って研究を進めるうえでの計画・方法は下記のとおりである。①近世・近代の文献史料や漁場絵図の収集、古老からの聞き取りや海上での実地調査を行う。②伊豆国内浦地域(現静岡県沼津市市域)の旧網元家の文書群などをもとに、近世・近代移行期の一漁家の生業・生活の多角性(ライフスタイル)を検討する。その際、生業以外の暮らしの諸側面や当主以外の家族のことなどに関わる雑多な史料に注目する。 上記をふまえ、初年度である2018年度は、下記の活動を実施した。史料収集作業として、2018年8月6・7日に国文学研究資料館において富山湾周辺漁村関係史料の、2019年3月30日に沼津市歴史民俗史料館において沼津市内浦小海集落関係史料の閲覧・撮影を行った。2019年1月12日には、かつて網元も務めた沼津市内浦小海の日吉家において、家や地域の歴史に関する聞き取り調査を行った。また、同家所蔵文書(既収集)について、一橋大学大学院博士後期課程の藤原正克氏に依頼して目録作成作業を実施した。 研究成果の公開に関わることとして、2018年6月10日、越中史壇会特別研究発表会において、「近世から明治期にかけての越中国灘浦における漁村秩序」と題した研究発表を行った。 2018年度に研究を進めたうえでの感触として、特に上記の②に関わって、漁業・漁民的要素や近世・近代の同時代的事柄はもとより、漁業・漁民以外の要素や現代史もまた、近世・近代移行期の漁民・漁村を考えるための素材として重要性を増してきたように思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、今後の研究展開の手がかりとなる史料の調査・収集・整理を実施できた。具体的には、富山湾周辺および伊豆国内浦地域の漁民・漁村を対象とした古文書の収集・整理や現地の古老等からの聞き取り調査が進んだということである。また、富山湾周辺漁村については、研究会での報告を通して、現時点での考えを一定程度整理することもできた。 内浦小海日吉家文書の目録作成作業については、当初考えていたよりも開始が遅れたものの、開始後は順調に作業を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に収集した富山湾周辺および伊豆国内浦地域に関する史料の分析作業を進め、論文発表や学会報告へとつなげていく。また、それらの地域に関する史料収集作業も継続する。特に今年度は、古文書の閲覧・撮影や聞き取り調査のほか、新たに富山湾周辺、伊豆国内浦、出羽国飛島(現山形県酒田市域)、陸前唐桑(現宮城県気仙沼市域)のいずれかの地域について、現地での海上調査の実施を企図している。 内浦小海日吉家文書の目録作成作業については、引き続き一橋大学大学院博士後期課程の藤原正克氏に依頼して作業を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
人件費・謝金の実支出額が当初予定していたよりも少なかったことが大きい。主には内浦小海日吉家文書目録の作成作業にかかる経費として考えていたが、作業開始が当初予定していたよりも遅れてしまった。作業従事者には、できる限りの作業をしてもらったが、2018年度中には、想定していた支出額に満たない結果となった。 そこで、2019年度には、繰り越し分も合わせて活用する形で、2018年度に収集した史料の分析、新たな史料の収集、現地での海上調査を実施するのに加えて、上記目録作成作業も継続することとしたい。
|