本研究では、太平洋戦争の戦跡を訪問する営為(戦跡観光)において、戦跡観光の現場に身を置く多様な行為者が、国家の枠組みで太平洋戦争の記憶を想起するサブジェクトとして、あるいは国家の枠組みに回収しきれない創造性を持ったエイジェントとして、構築されていく過程を民族誌的な観点から検討した。事例として、パラオ諸島ペリリュー島における戦闘終結75周年、米軍によるグアム「解放」75周年を巡る動向に注目し、日米の訪問者など戦跡観光に関わる人々、戦跡やモニュメントなどのモノ、人々やモノを受け入れてきた地域社会の3者間のもつれあいのなかで、戦争の記憶を想起する主体が構築されていく過程を明らかにした。
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