研究課題/領域番号 |
18K01197
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研究機関 | 東京通信大学 |
研究代表者 |
宮坂 敬造 東京通信大学, 情報マネジメント学部, 教授 (40135645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 先進国以外で展開する文化精神医学 / 文化精神医学的芸術療法概念の変容 / 地域に入り込む芸術療法 / ハイブリッド文化社会集団過程の葛藤と再統合 / 文化医療人類学 |
研究実績の概要 |
2020年度は、世界的な新型コロナ感染状況の趨勢悪化により、9月に予定していたジャマイカのキングストン地区への出張調査、3月期に予定していたカナダマッギル大学への研究調査出張も不可能のままに推移し、また、ブラジルでの海外調査も実施できないままに終わった。本研究当該年度研究課題実施には不可決な部分となっていた上記海外調査実施が不可能となり、研究進捗に遅れを生じた面があったが、それにもかかわらず、その条件の中で、最善の研究実施のやり方を探り、以下を実施した。 新規収集研究文献による研究課題検討を継続し、また、これまで収集した重要研究文献を再検討し、新しい付加的情報や研究観点を追加しつつ、本研究課題を再検討し、進展部分を見極める検討をおこなった。さらに、ウェビナーやズームによる海外関連研究セミナーへの遠隔参加機会を5度ほど重ねながら、本研究課題に直接的のみならず間接的に関連する論点・観点を追補し、追補研究情報を収集する方法によって、次年度海外調査の可能性に期待しつつ、中間報告論文の準備をおこなった。マッギル大学J. Guzder教授、および、L. J. Kirmayer教授、また、在ブラジルのV. Pordeus医博ともメール連絡を通して、関連情報についてのやりとりと論点に関わる意見をいただいた。そうした過程を踏まえ、中間的アウトプットとして、代表者が執筆した「デザインの人類学と多元感覚の人類学が繋がる新たな人類学的課題の探求―オーストラリア先住民のメッセージ・スティックから、心理歴史誌的文化療法まで―」で、2020年2月に現地海外調査出張期間中ジャマイカで参与観察した3日間の心理歴史誌的文化療法の特徴と小集団過程焦点の推移の様相の分析を加えた。今年度物故したF.Hickling医博の青年期の黒人レゲエ文化志向や家系の歴史等の個人史の把握から、上記療法の特色との関連分析を準備。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の場合、ジャマイカ・キングストン地区での海外本調査、ブラジル・リオ・デ・ジャネイロとサンパウロ等での予備調査、カナダ・モントリオールのマッギル大学での継続的研究調査が、研究課題の進捗に不可欠な部分であるが、新型コロナ感染状況の世界的悪化により、海外出張が不可能になった。このことによって、この海外調査部分に関しては本年度見込んでいた成果対応部分がなく、次年度に当該海外調査を順延せざるをない点があるため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染状況の世界的悪化により、海外出張が不可能になった状況のなかでは、海外調査計画部分を除くやりかたをさらに工夫・洗練する方法開拓を継続する。数ヶ月に1回程度の頻度で開催される可能性のあるジャマイカのUniversity of West Indiesに連なる精神医療関係者開催のZOOM形式の研究セミナー、カナダ・マッギル大学文化精神医学部門開催のZoom形式の研究セミナーに適宜参加し、また、研究協力していただいている海外研究者たち(マッギル大学J. Guzder教授、および、L. J. Kirmayer教授、また、在ブラジルのV. Pordeus医博、N. D'Souza博士、さらに、J. Walcott医博、)との個人的メール連絡やZoom連絡を通しておこなうやり方で、研究推進しうる可能性をさらに探っていく。それと同時に、今年度の後半期に新型コロナ感染状況が緩和し、さらには2020年度に予定していた海外出張が2021年度期間内に可能になることを期待し、海外調査の部分での遅れを取り戻す方針を立てている。 また、2020年5月に他界されたF.Hickling医博の個人史をさらに詳しく把握し(ラスタファリアン運動へ傾斜した時期や家系の文化特徴などの伝記的諸資料)、それをジャマイカの社会文化状況の変化の歴史的推移とつきあわせて、文化医療人類学の視座から分析・把握をおこなう。心理歴史誌的演劇的プロットの設定がこの療法のなかでなぜ重要となったのか、葛藤や対立を含む地域コミュニティの部分的再統合やコミュニティ変革の触媒となりえているのかを、実際の集団過程の展開から確認する場合、その前景となる土台を資料的にたどる作業をおこなう。ブラジルの動向については、資料面での追加のほか、新型コロナ感染状況の好転により、実際の海外出張による街頭演劇の準備過程と実施場面の参与観察を企画。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染状況の世界的悪化により海外調査の許可が降りず、2020年度の海外出張調査経費の使用執行ができなかったため。
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